研究課題/領域番号 |
17K11842
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
東 雅之 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (20144983)
|
研究分担者 |
青田 桂子 徳島大学, 病院, 講師 (70437391)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 唾液腺 / 導管細胞 / 腺房細胞 / ケモカイン / ケモカインレセプター / サイトカイン |
研究実績の概要 |
「唾液腺組織へのリンパ球浸潤阻止療法構築」のため、(1) 正常ヒト唾液腺導管細胞株(NS-SV-DC)および腺房細胞株(NS-SV-AC)(Lab Invest, 69:24-42, 1993)の未処理あるいはTNF-aやIFN-g処理におけるケモカインIP-10, Mig, I-TAC mRNAおよびケモカインレセプターであるCXCR3 mRNA発現をReal-time RT-PCRにて検索した結果、ケモカインの発現は導管細胞において強発現が認められた。なおCXCR3の発現は両細胞において認められなかった。(2) 間接蛍光抗体法にて各細胞株における未処理あるいはTNF-aやIFN-g処理におけるケモカイン、ケモカインレセプター発現を蛋白レベル、細胞局在レベルにて検索した結果、ケモカインは導管細胞の細胞質内に認められた。ケモカインレセプターは認められなかった。(3) すでに我々はSjS患者の唾液中にはIP-10が正常人唾液に比較して著明に高値を示していることを明らかにしていることから、IP-10に焦点を絞りヒト抗IP-10抗体製剤による培養細胞株へのケモカイン発現に及ぼす影響を解析した結果、抗IP-10抗体により発現量の低下が認められた。(4)マウスからCXCR3+末梢血単核球を採取し、ケモカインへの遊走能を検索した結果、ケモカインへの遊走現象が確認された。以上より、唾液腺導管細胞におけるケモカイン発現によるリンパ球遊走の促進とその制御が詳細に解析できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
唾液腺導管細胞及び腺房細胞におけるケモカインの発現につき詳細に解析を行った。またサイトカインによるケモカイン発現制御について解析を行った。すなわち、唾液腺導管細胞においてはリンパ球の遊走を促進させるケモカインであるIP-10の発現が腺房細胞に比較して著しく高発現していることを明らかにした。これにより、導管細胞周囲へのリンパ球浸潤機構を解明した。また、サイトカインによるケモカインの発現調節機構においては、導管細胞においてはIFN-gにより、また腺房細胞においてはTNF-aによりその調節を受けていることを明らかにした。以上のことから、唾液腺導管細胞周囲組織へのリンパ球浸潤機構の解析が行えた。
|
今後の研究の推進方策 |
「腺房構造安定化療法の確立」のため、(1) 本疾患モデルマウスに転写因子NF-kB阻害剤であるBortezomibを腹腔内に投与後、各時点で唾液腺の病理組織学的検索を行う。また、(2) 唾液腺組織におけるNF-kB活性をElectrophoretic mobility shift assay (EMSA)およびWestern blottingにて解析する。そしてNF-kB活性抑制と腺房構造安定化との関連性につき検討する。 さらに「腺房細胞での水分泌促進療法確立」のため、(3) 培養唾液腺腺房細胞株をヒストン脱アセチル化阻害剤 (HDACインヒビター) にて処理した後、腺房細胞株におけるAQP5の発現誘導を分子細胞生物学的に検証する。また、(4) 本疾患モデルマウスにHDACインヒビターを腹腔内に投与後、各時点での腺房細胞におけるAQP5の発現および唾液分泌量を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)3月に納品となり、支払いが完了していないため。 (計画)4月に支払いする予定である。
|