研究課題/領域番号 |
17K11843
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
笹部 衣里 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (40363288)
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研究分担者 |
山本 哲也 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00200824)
仙頭 慎哉 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (30635264)
北村 直也 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (70351921)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞老化 / 口腔扁平上皮癌 / SASP |
研究実績の概要 |
【目的】口腔扁平上皮癌においては抗癌剤治療に対して抵抗性を示すものもあり、その対応には苦慮させられることが多い。近年、DNA損傷を受けた細胞の一部は増殖能が低下し細胞老化に陥るものの、炎症性サイトカイン、ケモカイン、細胞外マトリックス分解酵素、増殖因子などのたんぱく質やエクソソームといった生理活性物質を分泌する細胞老化関連分泌現象(SASP)を引き起こすことで、生存し続けることが明らかにされた。さらに、このSASPは癌細胞周囲の微小環境を変化させ、癌の悪性度を増強することが示されている。そこで、本研究では口腔扁平上皮癌の抗癌剤耐性獲得における細胞老化とSASPの関与について検討した。 【材料および方法】舌扁平上皮癌細胞株SASを低濃度のCDDPに持続的に曝露させることによりCDDP耐性株(SAS/CR2)を樹立した。親株と耐性株のCDDP存在、非存在下における細胞増殖能、CDDPによるアポトーシス誘導能を比較検討した。その後、CDDP耐性化が細胞老化に及ぼす影響を検討するとともに、SASPの関与について検討した。 【結果】親株と比較して耐性株ではCDDPによる増殖能の低下、アポトーシス誘導が抑制されていた。それとともに、耐性株の一部の細胞はSA-β-gal陽性の老化様形態を示し、p21およびp53の発現が亢進していた。また、SAS/CR2の培養上清ではIL-1αを含む幾つかのサイトカインレベルが亢進していた。 【考察】以上より、口腔扁平上皮癌細胞のCDDP耐性獲得には細胞老化およびSASPが関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度に計画した研究は遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
CDDP耐性化に関与するSAS/CR2細胞の培養上清中に含まれる主要なSASP因子を追及するとともに、間質細胞(線維芽細胞、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞など)をSASP因子で処理し、増殖能、血管、リンパ管新生能への影響について解析を行う。さらに、親株およびSAS/CR2をヌードマウス背部皮下に移植し腫瘍を形成させた後、CDDPとともにSASP因子を投与するか、SASP因子を遺伝子操作により強発現ないしノックダウンした細胞を移植した後にCDDPを投与し、経時的に腫瘍径を計測し、腫瘍のgrowthへ及ぼす影響について検討する予定である。
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