研究課題/領域番号 |
17K11846
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
林田 淳之介 九州大学, 歯学研究院, 助教 (80432920)
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研究分担者 |
中村 誠司 九州大学, 歯学研究院, 教授 (60189040)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 口腔扁平苔癬 / サイトカイン / TSLP / 樹状細胞 |
研究実績の概要 |
口腔扁平苔癬 (oral lichen planus: OLP) は、口腔粘膜に角化異常を伴う慢性炎症性疾患であり、基底膜直下へのT細胞を主体としたリンパ球浸潤を特徴とする。その中でもびらん型のような炎症の強い症例ではTh2細胞の発現が亢進していることが報告されているが、なぜTh2が誘導されるのか、その機序については解明されていない。そこで、Th2活性化機構を解析するために、OLPの病変部と正常粘膜部におけるIL-33とThymic stromal lymphopoietin(TSLP)の発現を検索し、この2つのTh2活性化分子の病態形成に対する関与を検討した。さらに発現亢進を認めたTh2活性化分子については、OLPに特異的なものであるのかを検討するため、他の粘膜疾患 (過角化症、非特異性潰瘍) とも比較検討を行った。 結果、IL-33は病変・正常部ともほとんど発現を認めなかったが、TSLPはOLPの病変部のみ基底膜とその直下の浸潤炎症細胞に強い発現を認めた。TSLPはOLP以外の過角化症の基底膜にも発現を認めたが、CD11c (mDC) やGATA3 (Th2転写因子) はOLPの基底膜直下のみに著明に発現しており、CD11c陽性細胞数とGATA3陽性細胞数は正の相関を示した。さらにDCのサブセットとして、mDC は CD11cを、pDC はCD123 を、DC1 は CD1a を、DC2 は CD141を用いて免疫組織学染色を実施し、OLP病変局所でのDCのサブセット解析を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通りに、OLP 病変部ではまず、IL-2、CCR5、IL-4、TARC、MDC、CCR4、Foxp3、IL-10、IL-17の抗体を用いて、Th 細胞の種類とその局在を明らかにできたから。 またDCのマーカーとして、mDC は CD11cを、pDC はCD123 を、DC1 は CD1a を、DC2 は CD141 でそれぞれ免疫染色を行い、ある程度のOLP病変局所での局在を明らかにできたから。
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今後の研究の推進方策 |
Th1/2 を誘導する DC はそれぞれ mDC/pDC であるという仮説のもと研究を進めている。まずIL-2 ファミリーに属する thymic stromal lymphopoietin (TSLP) というTh2 型サイトカインに注目し、その局在を免疫組織化学染色で確認した。すると、重症であるびらん型の OLP では、主に Th2 が粘膜上皮下にびまん性に浸潤し、TSLP はその粘膜基底層周囲に強く発現、また mDC のマーカーである CD11c 陽性細胞が上皮周囲に多く集積するものの、 pDC のマーカーである CD123 陽性細胞はその周辺に散在するのみであった。 以上のような理由で、「Th2 誘導能をもつ その他の DC の存在があるのでは?という次の仮説にたどり着いた。そこで本研究の目的は、 1病変局所の Th や DC1/2 といったサブセットの局在を明らかにする。 2その浸潤リンパ球、DC1/2 および粘膜基底層が産生するサイトカイン・ケモカイン・ケモカインレセプターを解析する。 という段階に入り、本年の研究として実行していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、免疫組織学染色のための抗体など、多くの消耗品に余裕があったために予定予算より支出額が下回った。次年度は、翌年度分の助成金と合算することでやや高額の消耗物品購入予定である。
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