研究課題/領域番号 |
17K11850
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
松末 友美子 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (60571007)
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研究分担者 |
松吉 ひろ子 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 准教授 (10448772)
山本 一彦 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (20243842)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 早期診断 / ラット舌発癌モデル / ラマン分光法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ラット舌発癌モデルにおいて癌発生過程に生じる病変の分子組成および分子構造をラマン分光法によってin situによって解析し、病変の進行により、どのような変化をもたらすか定量的に評価し、病理組織学的変化、免疫組織化学的変化との関連について明らかにする。さらにこれらの技術を用いて、ラット扁平上皮癌の発生過程に生じる変化を早期から非侵襲で発見し、口腔癌の早期発見に応用しようとしている。本研究の成果は、ヒト口腔癌を低侵襲で早期に発見することができる高感度ラマン分光イメージングシステムの開発への発展、強いては早期発見、早期治療の一助を担うと期待される。 口腔癌発生モデルとして4-nitroquinoline 1-oxide (4-NQO)を用いたラット舌発癌モデルを作製し、ラットの舌の扁平上皮に、過形成、異形成を経て扁平上皮癌を発生させた。まずは早期癌発生までの各過程における、肉眼的変化を観察した。さらに各過程における病理組織学的変化および免疫組織学的変化を観察するために、HE染色および免疫染色(p53、Ki63、CK13,CK17)を行った。優位性変化が認められたKi63およびCK17の判定基準を用いて、病理組織学的および免疫組織化学的評価を行った。ラマン分光法による解析では解析可能であると判定された石英製のスライドグラスにて作製されたサンプルで解析を行った。ラット舌発癌モデルの舌粘膜の変化は、ラマン分光法によるハイパースペクトルイメージングデータにおいてDNAタンパク変動を反映していた。またこれらの変化は、病理組織学的および免疫組織化学的評価と一定の相関を認めた。以上より、ラマン分光法による解析はラット舌発癌モデルにおいて生じる病変の病理組織学的、免疫組織化学的変化をとらえることが可能であると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔癌発生モデルとして4-nitroquinoline 1-oxide(4-NQO)によるラット舌癌モデルを用いて病変を作製し、パラフィン切片のスライド標本を作製しラマン分光法にて解析を行った。当初の予定では生きたままのサンプルを解析する予定であったが、他施設からの器材の移動が困難であると判断しサンプルを変更した。病理組織学的評価、免疫組織化学的評価を行い、さらにラマン分光法により解析を解析を行った。ラマン分光法によるハイパースペクトルイメージングデータにおいて、口腔癌発生段階における舌粘膜の変化をDNAタンパクの変動として反映することができた。またこれらの変化は、病理組織学的および免疫組織化学的評価と一定の相関を認めた。解析結果を確認できており、実験の進行としては概ね順調であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
検討したサンプルにて、癌発生過程に生じた病変における病理組織学的、免疫組織化学的変化とラマン分光法で得られた分子組成および分子構造の変化について解析が終了している。癌発生の初期の変化を光学的にとらえるためのデータを収集し、これらのデータを重回帰分析などにより解析し定量的な指標への応用を試みており、こちらも一部は解析が終了している。今後はラマンスペクトル校正処理を進め、病変部における分子組成・分子局在変化を定量的に示す画像の再構成を可能とするハイパースペクトルイメージング(HSI)データ処理を視覚的に捉えるようにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
免疫組織化学的評価のための免疫抗体の確認、ラマン分光法測定のためのサンプル作製のための素材の変更、ラマン分光法による解析前に必要なスペクトル校正および多変量解析に使用する解析ソフトウェアやプログラム言語の構築に当該助成金が生じ、翌年度使用予定である。
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