研究課題/領域番号 |
17K11855
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
片桐 綾乃 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (40731899)
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研究分担者 |
岩田 幸一 日本大学, 歯学部, 教授 (60160115)
久保 亜抄子 日本大学, 歯学部, ポスト・ドクトラル・フェロー (70733202)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 三叉神経脊髄路核尾側亜核 / 投射ニューロン / 視床後内側腹側核 / 橋結合腕傍核 / 侵害情報伝達機構 |
研究実績の概要 |
三叉神経脊髄路核から上部頸髄(trigeminal subnucleus interpolaris-caudalis-upper cervical spinal cord: Vi-Vc-C1)の表層および深層には視床や橋に感覚情報を伝える投射ニューロンが存在している。頭頸部領域の異常感覚や痛みを伝える際、これらの投射ニューロンは投射先の違いにより異なる機能を持つ。研究初年度は、naive ratを用い、Vi-Vc-C1から視床および橋への投射ニューロンの吻尾側的な分布様式、および侵害情報伝達に寄与する投射ニューロンの形態学的特性を明らかにした。 Naive ratの右側視床後内側腹側核(ventral posteromedial thalamic nucleus: VPM)、視床内側核群(medial thalamic nuclei: MTN)または橋結合腕傍核(parabrachial nuclei: PBN)に逆行性神経トレーサー(3% fluorogold: FG)を注入し、Vi-Vc-C1の投射ニューロンを標識した。FG注入から7日後、左側上口唇にカプサイシンを注射(C-fiber刺激)して、Vi-Vc-C1の投射ニューロンにおける侵害刺激応答性phosphorylated extracellular signal-regulated kinase(pERK)およびサブスタンスPの受容体であるNK1の発現分布様式を解析した。 侵害刺激に応答するpERKはVc-C1の表層に認められた。また、FGで標識されたPBN投射ニューロンにおけるpERK-NK1陽性ニューロンの割合は、VPM、MTN投射ニューロンに比べて有意に大きかった。すなわち、Vc-C1の表層にあるカプサイシン応答性侵害受容ニューロンの多くが直接PBNに投射しているのに対し、VPMやMTNに投射するニューロンは介在ニューロンによる調整を受ける可能性が示された。この結果は、Experimental Neurology (2017 Jul;293:124-136.) に誌上発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の所属機関移動に伴い、一時、実験を中断せざるを得なかったため、実験進捗状況はやや遅れていると言える。しかし、naive ratを用いたVi-Vc-C1における投射ニューロンの侵害情報伝達機構に関する論文を誌上発表したので、次の段階として、神経障害性疼痛モデルにおける侵害情報伝達機構の解明に進んでいく。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度の結果から、Vi-Vc-C1におけるニューロンの吻尾的な分布の違いにより投射先が異なり、侵害情報の認知も異なることが示唆された。また、痛覚を伝える投射ニューロンは投射ニューロンのうちわずか10%程であった。したがって、痛覚情報の多くは介在ニューロンを介するものであるが、実際に痛覚を脳に伝えるのはこの僅か10%の投射ニューロンに依存しており、投射ニューロンの機能が神経障害性疼痛発症時にどのような可塑的変化を生じるかが、今後の研究のメインテーマとなる。 現在、神経障害性疼痛モデルラットを用い、熱刺激および機械刺激に対する逃避反射閾値の低下を確認し、さらに神経障害性疼痛発症時の侵害情報を伝える投射ニューロンの形態学的特性の解析を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験精度が上がり、予定していた逆行性神経トレーサーの使用量が減ったため、次年度使用額が生じた。繰り越した研究費は、今年度に使用する試薬購入および論文投稿・出版費用に充てる。
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