研究実績の概要 |
歯嚢は埋伏歯を抜歯する際に抜去歯と共に破棄される組織である.歯嚢は神経堤由来の組織で,組織幹細胞が存在すること,歯嚢由来細胞(歯嚢細胞)は,骨芽細胞や脂肪細胞等へと分化することが報告されている.本年度は,歯嚢細胞の神経系細胞への分化能を検討した.【方法】本学倫理委員会の指針に従い,歯嚢をcollagenase/dispase処理し,滑膜細胞を分離し,初代培養および継代培養を行った.歯嚢細胞をfibornectin coating plateに播種し,間葉系幹細胞神経細胞誘導培地 (NDM)で培養して神経系細胞への分化誘導を行った.さらに,歯嚢細胞を無血DMEMにサプリメント B-27, bFGF, EGFを加えた培養液で培養し, neurosphereを形成させた.神経系細胞マーカーの発現は,免疫組織化学染色法およびreal time-PCR 法で調べた.【結果および考察】分化誘導を行っていない歯嚢細胞でも, 神経幹細胞マーカーであるNestin (NES), 神経前駆細胞マーカーであるMusashi (MSI)-1, と-2, 神経細胞マーカーであるtubulin-β-III (TUBB3), グリア細胞マーカーであるmyelin basic protein (MBP) の発現を認めた. NES およびTUBB3は,神経細胞への分化誘導の有無に関わらず, 歯嚢細胞では恒常的に発現していた. MSI-1, -2 および MBP は, 神経細胞への分化誘導により発現上昇が認められた.また,neurosphere形成すると,神経系細胞マーカー発現が上昇した.以上の結果から, 歯嚢細胞には, 神経系細胞へと分化可能な細胞が存在することが認められ,神経再生の基礎的研究または医療応用に有用である可能性が示唆された.
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