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2018 年度 実施状況報告書

歯嚢由来細胞の神経系細胞分化機序と神経再生への有効性の検討

研究課題

研究課題/領域番号 17K11857
研究機関日本大学

研究代表者

小倉 直美  日本大学, 松戸歯学部, 講師 (10152448)

研究分担者 伊藤 耕  日本大学, 松戸歯学部, 講師 (20419758)
高橋 康輔  日本大学, 松戸歯学部, 講師 (30705687)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード歯嚢 / 歯嚢由来細胞 / 未分化間葉系幹細胞 / 神経幹細胞 / 幹細胞マーカー / 再生医療
研究実績の概要

歯嚢は神経堤由来の組織で,組織幹細胞が存在する.ヒト歯嚢から分離した細胞(歯嚢細胞)は,神経幹細胞マーカーであるNestinを発現しており,神経細胞誘導培地で培養すると,神経系細胞マーカー発現が上昇することを認めた.本年度は,歯嚢組織の神経幹細胞や間葉系幹細胞の局在を検討した.【方法】本学倫理委員会の指針に従い,歯嚢を速やかに10%中性緩衝ホルマリンで浸漬固定後,10% EDTAで脱灰後,パラフィン切片を作製した. HE染色および PAS染色,免疫組織化学染色を行った.【結果および考察】組織学的に矢状断面では, 三層構造を有し, 最も外側の外層とその内側の介在層はいずれも線維性結合識で構成され, 介在層の方が線維芽細胞の密度が高かった.最内層では,比較的高密度な毛細血管, 歯原性上皮島, 紡錘形もしくは楕円形の核を有する間葉系細胞が観察された. また, 歯冠との隣接面には菲薄な退縮エナメル上皮が認められた. PAS染色でもは,弱陽性の外層, 強陽性の介在層, 弱陽性の内層の三層構造が観察された.多分化能を有し, 増殖能に優れている間葉系幹細胞は, 間葉系幹細胞のマーカーであるCD90, CD105およびCD271を共発現していると報告されている. CD90およびCD105または, CD90およびCD271の二重陽性細胞は血管内皮および退縮エナメル上皮において観察された. CD15, Stro-1およびNotch-1は多能性幹細胞のマーカーとして知られている. Notch-1とStro-1または, Notch-1とCD15の二重陽性細胞は, 退縮エナメル上皮において観察された.歯嚢組織全域に未分化間葉系幹細胞の存在が認められた. 退縮エナメル上皮では, 複数の幹細胞マーカーを強発現している細胞が認められ,再生医療の細胞の供給源として, 有用である可能性が示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

十数名の患者から歯嚢組織を採取し,組織学的検討のため組織ブロックを保存している.さらに、歯嚢細胞の分離・培養を行っており,実験に使用可能な歯嚢細胞の例数は増えている。
未分化間葉系幹細胞マーカー抗体や神経幹細胞マーカー抗体を用いた免疫組織化学染色結果から,歯嚢組織における各幹細胞マーカー陽性細胞の局在が明らかになりつつある。幹細胞マーカー陽性細胞は,歯嚢組織全体に散在しているが,結合組織が豊富な介在層よりも歯嚢外層や内層に多く存在することが認められた。しかし,幹細胞マーカー抗体の種類によって,陽性細胞が歯根側で多く認められる場合,陽性細胞が歯冠側で多く確認される場合がある事が判明した。
さらに,歯嚢組織から分離した歯嚢由来細胞を神経細胞誘導培地で培養を行うと,神経系細胞へと分化誘導可能であることを確認している。歯嚢細胞には,神経系細胞へ分化可能な細胞が存在することを明らかにしている。

今後の研究の推進方策

歯嚢由来細胞には,神経系細胞へと分化可能な細胞が存在する事が認められた。そこで、,歯嚢由来細胞のうち神経系細胞へと分化可能な細胞を効率よく分離するための検討を行う。
未分化間葉系幹細胞は歯嚢組織全体に散在しているが,結合組織が豊富な介在層よりも歯嚢外層や内層に多く存在すること,歯嚢の内側に存在する退縮エナメル上皮には,幹細胞マーカー陽性細胞が多いと認められている。そこで,今年度は,歯嚢組織から効率よく神経系細胞へと分化する細胞を採取するために,歯嚢組織の部位別に歯嚢由来細胞を分離する事が可能か検討を行う。歯嚢組織の部位別に歯嚢由来細胞を分離する事ができたら,得られた歯嚢由来細胞がどのような細胞マーカーを発現しているのか検討を行う。その後,歯嚢組織の部位別に歯嚢由来細胞を神経細胞への分化誘導を行う。さらに,神経細胞以外にも,グリア細胞やシュワン細胞へと分化誘導が可能か検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

(理由)当初の計画より,購入した神経系細胞の細胞マーカー等に対する抗体の種類が少なかったため。また,本申請の研究に対する成果はおおむね順調に進んでいるが,本テーマで発表を行なった学会は近隣であったことにより,学会旅費での使用がなかったため。
(使用計画)歯嚢細胞を神経系細胞やグリア細胞へと分化誘導する培地や,神経系細胞マーカー発現を検討するための,免疫組織化学染色用試薬,遺伝子発現を測定するためのreal time-PCR試薬等の購入に使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Effect of prostaglandin E2 on human dental follicle cells during osteogenic differentiation2018

    • 著者名/発表者名
      Hidesuke Yoshimoto, Naomi Ogura
    • 雑誌名

      Int J Oral-Med Sci

      巻: 16 ページ: 39-48

    • 査読あり
  • [学会発表] 歯嚢組織における体性幹細胞の局在性についての検討2019

    • 著者名/発表者名
      加藤 有悟, 小倉 直美, 末光 正昌, 枝 卓志, 金尾 真吾, 高橋 康輔, 青木 暁宣, 伊藤 耕, 久山 佳代,近藤 壽郎
    • 学会等名
      第73回NPO法人日本口腔科学会学術集会
  • [学会発表] ヒト歯嚢における神経系細胞の局在および歯嚢由来細胞の神経系細胞への分化誘導2018

    • 著者名/発表者名
      加藤有吾,小倉直美,枝 卓志,金尾慎吾,高橋康輔,青木暁宣,伊藤 耕,末光正昌,久山佳代,近藤壽郎
    • 学会等名
      第63回(公社)日本口腔外科学会総会・学術大会
  • [学会発表] ヒト歯嚢組織の組織学的特徴およびNotch-1陽性細胞の分布における検討2018

    • 著者名/発表者名
      加藤勇吾,末光正昌,小倉直美,枝 卓志,金尾慎吾,吉本秀輔,高橋康輔,青木暁宣,伊藤 耕,久山佳代,近藤壽郎
    • 学会等名
      第72回NPO法人日本口腔科学会学術集会

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公開日: 2019-12-27  

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