研究実績の概要 |
歯嚢は神経堤由来の組織で,組織幹細胞が存在する.ヒト歯嚢から分離した細胞(歯嚢細胞)は,神経幹細胞マーカーであるNestinを発現しており,神経細胞誘導培地で培養すると,神経系細胞マーカー発現が上昇することを認めた.本年度は,歯嚢組織の神経幹細胞や間葉系幹細胞の局在を検討した.【方法】本学倫理委員会の指針に従い,歯嚢を速やかに10%中性緩衝ホルマリンで浸漬固定後,10% EDTAで脱灰後,パラフィン切片を作製した. HE染色および PAS染色,免疫組織化学染色を行った.【結果および考察】組織学的に矢状断面では, 三層構造を有し, 最も外側の外層とその内側の介在層はいずれも線維性結合識で構成され, 介在層の方が線維芽細胞の密度が高かった.最内層では,比較的高密度な毛細血管, 歯原性上皮島, 紡錘形もしくは楕円形の核を有する間葉系細胞が観察された. また, 歯冠との隣接面には菲薄な退縮エナメル上皮が認められた. PAS染色でもは,弱陽性の外層, 強陽性の介在層, 弱陽性の内層の三層構造が観察された.多分化能を有し, 増殖能に優れている間葉系幹細胞は, 間葉系幹細胞のマーカーであるCD90, CD105およびCD271を共発現していると報告されている. CD90およびCD105または, CD90およびCD271の二重陽性細胞は血管内皮および退縮エナメル上皮において観察された. CD15, Stro-1およびNotch-1は多能性幹細胞のマーカーとして知られている. Notch-1とStro-1または, Notch-1とCD15の二重陽性細胞は, 退縮エナメル上皮において観察された.歯嚢組織全域に未分化間葉系幹細胞の存在が認められた. 退縮エナメル上皮では, 複数の幹細胞マーカーを強発現している細胞が認められ,再生医療の細胞の供給源として, 有用である可能性が示唆された.
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