研究実績の概要 |
中脳辺縁系ドパミン(DA)神経が投射する側坐核のアセチルコリン(ACh)の生合成の阻害は実験動物の認知機能を低下させる。側坐核にはGABA受容体(-R)が分布しており,同部位のACh放出はGABAA-R作動薬のmuscimolの局所投与で減少する。しかしこのmuscimolの効果の発現に側坐核のGABAA-R刺激が関与するかは明らかでなかった。そこでmuscimolの側坐核への灌流投与が誘発した同部位のACh放出減少におけるGABAA-Rの関与を検討するため、muscimolとGABAA-R拮抗薬のbicucullineの併用投与実験を行った。比較のため側坐核のAChに対するGABAB-R作動薬のbaclofenおよびGABAB-R拮抗薬のsaclofenの効果も観察した。 実験には体重約200 g のS-D系雄性ラットを用いた。In vivo脳微小透析法で側坐核から15分毎に回収した細胞外液中のAChはHPLC-ECD法により定量した。薬物は透析膜を介した逆透析で側坐核へ灌流投与した。投与量は灌流液中の総量(mol)で示した。 その結果、側坐核のAChはmuscimol(3, 30 pmol)で約30%まで,baclofen(30, 300 pmol)では約45%まで用量依存的に減少した。Muscimol(30 pmol)またはbaclofen(300 pmol)によるAChの減少は,基礎ACh量に影響がない用量のbicuculline(300 pmol)またはsaclofen(12 nmol)の併用でそれぞれ消失した。 以上の結果から,muscimolはGABAA-R,baclofenはGABAB-Rを刺激して側坐核のACh放出を減少させることが示された。また側坐核のGABAA-RとGABAB-Rは,いずれも同部位のACh神経活動を抑制的に調節することが示された。
|