研究課題/領域番号 |
17K11865
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
辻極 秀次 岡山理科大学, 理学部, 教授 (70335628)
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研究分担者 |
山近 英樹 岡山大学, 大学病院, 講師 (10294422)
長塚 仁 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (70237535)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯原性腫瘍 / 骨浸潤 / 腫瘍間質相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究ではエナメル上皮腫における腫瘍および間質細胞の相互作用について解析、腫瘍骨浸潤の分子機構解明を目的としている。 本年度研究では、HSC-2(扁平上皮癌由来培養細胞株)単培養上清およびHSC-2+SCCst(扁平上皮癌間質由来細胞)共培養上清を用いて細胞培養を行い、細胞間相互作用が骨芽細胞分化に及ぼす影響について検討した。その結果、HSC-2単培養上清およびHSC-2+SCCst共培養上清添加実験群においてはALP活性が低下したが、SCCst単培養上清ではBMP-2添加群と比較してALP活性に殆ど変化が認められなかった。このことから扁平上皮癌では、間質細胞が単独であっても腫瘍細胞との共培養条件においても骨芽細胞分化に殆ど影響を及ばさない可能性が考えられた。 今までの研究からASF(エナメル上皮腫間質由来細胞)にAM-1(エナメル上皮腫由来培養細胞株)培養上清を添加するとMMP-1、MMP-3の遺伝子発現が増加することから、エナメル上皮腫では間質の線維芽細胞が浸潤に関与している可能性が考えられた。そこでエナメル上皮腫および扁平上皮癌におけるMMP-1、MMP-3タンパク質の存在について免疫組織化学的染色により解析し、腫瘍進展とMMPの関連性について検討した。エナメル上皮腫および扁平上皮癌ともに腫瘍胞巣を形成する細胞にMMP-1およびMMP-3の強い陽性所見が認められた。扁平上皮癌の間質では弱い陽性所見を認めたが、エナメル上皮腫では間質の線維芽細胞で強い陽性所見が観察され、特に骨周辺部でシグナルが増強する傾向が認められた。以上のことよりエナメル上皮腫では、間質線維芽細胞がMMPを産生し周囲の細胞外基質に作用することで腫瘍の浸潤に寄与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度研究ではHSCおよび間質細胞との相互作用が骨芽細胞分化におよぼす影響と、エナメル上皮腫ならびに扁平上皮癌におけるMMP-1、MMP-3タンパク質の存在について免疫組織化学的染色解析を行い、ほぼ当初の予定通りの実験データを得ることができた。腫瘍が産生するエクソソームに関しては、エクソソームは腫瘍の進展に大きな影響を及ぼさない可能性が考えられたため、焦点を腫瘍細胞が産生するタンパク質に絞って研究を展開させる方針となった。以上のことから研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方針としては、エナメル上皮腫と間質細胞との相互作用が骨芽細胞の分化におよぼす影響について解析が進んでいないことから、AM-1と腫瘍間質細胞を用いて共培養を行い、細胞間相互作用が骨芽細胞分化に及ぼす影響について検討する。エナメル上皮腫が間質線維芽細胞の浸潤能促進に関する影響に関しては、細胞浸潤チャンバーを用いて解析により浸潤細胞数が増加する傾向が認めらている。また、免疫組織学的解析によりエナメル上皮腫および扁平上皮癌におけるMMPタンパク質の局在については確認ができている。しかしながら腫瘍細胞がMMPの活性化に及ぼす影響については不明であるため、今後、腫瘍細胞としてAM-1およびHSC-2を用いて、腫瘍細胞が間質線維芽細胞のMMPの産生、活性化にどのようなに関与しているのか、ザイモグラフィーによる解析を行い詳細に検討する。 既にAM-1とHSCにおけるマイクロアレイ解析は実施済であり、遺伝子発現に関したデータを有している。そこで腫瘍細胞が産生、間質細胞に作用すると考えられる候補遺伝子の絞り込みを行うため、今後は文献検索等と生化学的手法を用いた遺伝子発現等の実験を行い原因遺伝子の絞り込みを行っていく予定である。
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