エナメル上皮腫は代表的な歯原性腫瘍であり骨組織への浸潤性を示す。これまでにエナメル上皮腫に関する様々な研究が行われてきたが骨浸潤機構の詳細は不明である。 本研究では、エナメル上皮腫の骨浸潤機構について解明することを目的としており、現在までにまでに以下のデータを得ている。1)エナメル上皮腫では、腫瘍細胞が骨芽細胞分化抑制に働く因子を産生している可能性が考えられた。2)細胞浸潤チャンバーを用いた解析により、腫瘍細胞が間質線維芽細胞の浸潤を促進させる可能性が考えられた。3)エナメル上皮腫の骨浸潤とMMPsの関連性について免疫組織化学的染色的に解析したところ、腫瘍胞巣および間質線維芽細胞にMMP-1およびMMP-3の陽性所見が認められ、特に骨組織周辺部においてシグナルが増強する傾向が認められた。 本年度研究では、腫瘍間質に認められたMMPsの腫瘍骨浸潤への関与について詳細に検討するため、エナメル上皮腫が間質線維芽細胞のMMPsの産生、活性化にどのように関与しているのか、ゼラチンおよびガゼインザイモグラフィーを用いて各種MMPsの活性化について解析を行った。その結果、扁平上皮癌では腫瘍細胞が産生する因子により間質線維芽細胞の種類にかかわらずMMPsが活性化するが、エナメル上皮腫では、エナメル上皮腫由来の間質線維芽細胞と腫瘍細胞の組み合わせのみにより、特定のMMPsが活性化する傾向が認められた。以上のことからエナメル上皮腫においては、腫瘍特異的な腫瘍間質相互作用により間質線維芽細胞からMMPsが産生され細胞外基質を分解することにより骨浸潤に関与する可能性が考えられた。
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