研究課題/領域番号 |
17K11866
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
近藤 誠二 福岡大学, 医学部, 教授 (10432634)
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研究分担者 |
小玉 正太 福岡大学, 医学部, 教授 (90549338)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リンパ管新生 |
研究実績の概要 |
近年、癌微小環境において、癌細胞自身が発現するサイトカインやケモカインのみならず、癌間質に浸潤・集積してくる炎症細胞、免疫担当細胞などの支持細胞が発現している様々なサイトカインが、癌の浸潤・転移に不可欠なリンパ管新生に重要な役割果たしていることが明らかになってきた。この知見をもとに、腫瘍血管新生因子CCN2が支持細胞の1つである癌関連マクロファージ(tumor-associated macrophage; TAM)から産生され、リンパ管内皮細胞で発現している転写因子prox-1を始めとして、リンパ管マーカーであるpodoplanin、LYVE-1の発現誘導を介して、リンパ管新生を主導的に制御しているか明らかにするため、リンパ管新生制御因子としてのCCN2の分子的背景・機構の解明する。 現在、悪性黒色腫細胞株におけるCCN2の細胞内局在による発現解析と悪性黒色腫細胞移植モデルによるリンパ管新生関連遺伝子の組織学的検索を行なっている。具体的にはATCC配給B16-F1(低転移性)および-10(高転移性)の2種類のマウス皮膚悪性黒色腫細胞株を用い、リンパ管新生に関与が知られているVEGF-C、-Dはもとより、CCN2、その上流制御因子TGFβの発現について、高、低転移性の細胞特異性により発現差異があるかどうか、polymerase chain reaction (PCR)法およびイムノブロット法にてmRNAレベルおよびタンパクレベルにて解析している。組織学的検索については、C57BL/6Jマウスを使用した高転移性、低転移性悪性黒色腫細胞移植モデルによるリンパ管新生関連発現サイトカインの組織学的検索を行なうLuminexによる網羅的解析時に判明した時間的至適条件下での組織(皮下腫瘍塊、腋窩リンパ節、肺組織)回収はもとより、移植早期段階の組織も回収しておき、免疫組織学的解析を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
悪性黒色腫細胞移植モデルによるリンパ管新生関連遺伝子の組織学的検索について、昨年度、移植細胞数の至適条件設定を行い、腋窩リンパ節、肺組織などへの転移が一定するようになった。標的分子はCCN2、その上流制御因子Transforming growth factor (TGF)-β、リンパ管新生因子VEGF-C、-D、さらにはリンパ管内皮細胞で発現している転写因子prox-1と同じくリンパ管マーカーであるpodoplanin, リンパ管壁内宮表面に発現するLYVE-1の発現を検討している。しかしながら、CCN2自体の発現が弱く、現在までのところネガティブデータである。癌微小環境における癌周囲支持細胞であるTAMの 同定にはCD11bをマーカーとして用いる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
支持細胞におけるCCN2添加によるリンパ管新生因子発現変化の確認や支持細胞におけるCCN2分子強制発現もしくは、発現抑制による機能解析を行なっていきたい。マウス初代培養リンパ管内皮細胞を使用してCCN2分子強制発現によるリンパ管新生因子発現変化の確認を行なう。さらに他の支持細胞であるマクロファージでも同様な検討を行い、その発現動態の比較検討、細胞特異的現象の有無を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費(動物実験や消耗品など)や論文作成経費に使用予定。
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