研究実績の概要 |
口腔がんは、治療方法や臨床検査・診断技術の発展、基礎研究による学術的知識の蓄積にもかかわらず、明らかな生命予後の改善が得られていない(Mersh D et al., J Pathol 2011)。また、口腔を含めた顔面領域は、摂食や嚥下機能のみならず、対人関係の窓口として重要な役割を担っている。術後の機能的・審美的障害が患者の社会生活の質に与える影響は大きいため、がんの予防および早期発見とそれに直結するリスク診断法の確立が急務の課題である。口腔粘膜は食物や化学物質をはじめ多種多様な外的刺激に曝露されており、それによるジェネティックおよびエピジェネティック異常の蓄積が、口腔がんの素地を形成すると考えられている。本研究では、新規突然変異検出法を用いた口腔粘膜における発がんリスクを反映する稀少突然変異(ジェネティック異常)とDNAメチル化異常の蓄積(エピジェネティック異常)を調べた。がん化のリスクが高い口腔白板症においてDNAメチル化異常によりサイレンシングされることが知られている7つの遺伝子(CMTM3, RBP4, NKX2-3, TSPYL5, CLDN11 TRPC4, MAP6)について、MSP(Methylation - Specific PCR)法によりメチル化解析を行った。口腔がん患者の非がん部口腔粘膜においては、プロモーター領域CpGアイランドの異常メチル化を認めたら、非がん患者の口腔粘膜の組織においては、異常メチル化はほぼ認められなかった。突然変異頻度は新規突然変異解析法を用いて解析を試みている。ゲノムDNAのコピー数を定量し、100コピーのDNAをテンプレートにして、multiplex PCRにより291領域、計48,587塩基について増幅、作製したライブラリについてIon ProtonおよびPI chipを用いて平均深度10,000でシークエンシングを行い、シークエンシングエラーの少ない領域の点突然変異を算出、理論値1%の頻度を示す変異体の個数を算出するために頻度0.8%-10%を示す変異体の検索を行っている。
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