悪性度の高い癌は様々な環境で免疫寛容を成立させ生存している。高浸潤型の口腔扁平上皮癌の浸潤先端部では、僅か数個の癌細胞が周囲微小環境で免疫寛容を成立させ腫瘍免疫から逃れ生存している。申請者は、口腔癌細胞の4D型高浸潤様式への移行や、高浸潤癌微小環境での免疫寛容にEMTが関わる可能性を報告した。組織内微小環境を構成する細胞外マトリックスやそれと結合するEMTに関連する生理活性物質の代謝にはMMPが関わる。最近、EMTにより誘導される癌関連線維芽細胞で発現しているMMPがPD-L1に対する分解活性をもち、それにより活性化したT細胞の免疫寛容を抑制することが報告された。本研究は、1;EMTが誘導する4D型高浸潤口腔癌細胞や癌関連線維芽細胞の形成過程で発現低下するMMPを特定した。2;PD-L1に対する分解活性を調べ、3;切断部位を同定した。4;PD-L1を分解するMMPなかで、T細胞の免疫寛容を抑制するMMPを特定する。5;さらにこの免疫寛容を抑制するMMPを安定発現する4D型高浸潤口腔癌細胞や、選択的MMP合成インヒビターを用いてMMPの癌微小環境での腫瘍免疫活性化効果を検証した。浸潤先端部の4D型高浸潤口腔癌細胞がMMPで活性化された腫瘍免疫により低浸潤癌へと変化するかを、マウス口腔癌浸潤転移モデルを用いて検証した。本研究は以上の5研究項目のもとに、EMTが誘導する4D型高浸潤口腔癌細胞や癌関連線維芽細胞の形成過程で発現低下するMMPを調べた。さらに、PD-L1を分解するMMPを特定し、MMPが腫瘍免疫を活性化するかを検証した。
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