研究課題/領域番号 |
17K11870
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
北原 寛子 金沢大学, 附属病院, 助教 (70507053)
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研究分担者 |
中村 博幸 金沢大学, 医学系, 准教授 (30542253)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / 微小管阻害薬 |
研究実績の概要 |
高浸潤口腔癌患者の生存率は、近年の新しい分子標的薬の開発にもかかわらず依然として厳しい状況にある。我々は、乳癌に対する微小管阻害薬が高浸潤口腔癌細胞に対して、特異的に高い感受性をもち、さらに低浸潤性癌細胞の表現型へ誘導することを見出した。以上の背景から本研究では、口腔癌の高浸潤性獲得メカニズムと微小管の関連を解析し、高浸潤口腔癌の克服のための情報を提供することを目指している。 浸潤様式の異なる口腔扁平上皮癌由来細胞株(3型:OSC-20細胞、4C型:OSC-19細胞、4D型:OLC01細胞)を用いて、それぞれの細胞について、微小管阻害薬であるエリブリン、パクリタキセル、ビンブラスチンの感受性を調べるために、IC50濃度を求めた。結果、エリブリンはビンブラスチンや頭頸部癌で使用されるパクリタキセルと比較し、高浸潤性である4D型細胞に対し高い感受性を示した。また、細胞間でも3型、4C型細胞と比較し、4D型細胞において感受性が高かった。この結果より、今まで化学療法に対し耐性を示していた高浸潤性の癌細胞にエリブリンが効果を示す可能性が示唆された。 そこで薬剤と微小管との関連を解析するために、リアルタイムRT-PCRを用い、各細胞の各チューブリンβの発現について調べ、薬剤処理による発現の変化を検討した。未処理では他の細胞と比較し、4D型細胞で特に高い発現を示したのはTUBB3であった。また、TUBB3はエリブリンによる処理をすることで、発現低下が認められた。このことよりTUBB3が関連が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は浸潤様式の異なる扁平上皮癌細胞株を用いて、チューブリンα、β、γの発現、また微小管と相互作用するその他の因子について合わせて検討する予定であった。微小管阻害薬は主にチューブリンβに結合し、作用することから今回はまず、チューブリンβのみを調べることとした。また、チューブリンの発現を調べる中でTUBB3の発現に着目することとしたため、その他の因子についても検討に至っていない。 次年度に予定していた、微小管阻害薬エリブリン、パクリタキセル、ビンブラスチンの各細胞の感受性を調べ、比較検討を本年度におこなった。このことにより、各細胞へ薬剤処理による影響を検討する際に使用する薬剤濃度を決めることができ、薬剤処理によるチューブリンの発現変化の検討も本年度へとくりあげておこなった。 本年度は実験結果よりターゲットを絞ることにより次年度に予定していた実験を前倒ししたものもあるが、検討に至らなかったものも多く、全体としてやや遅れていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、口腔扁平上皮癌細胞での微小管阻害処理(エリブリン、パクリタキセル、ビンブラスチン)による微小管の関連を引き続き検討する。微小管の関連を解析するため、mRNAで認めた発現変化がタンパク質でも同様に生じているかを検討するためWestern blot法を用いて各チューブリンβの発現解析を行う予定である。 また、口腔癌細胞マウス移植腫瘍での微小管阻害薬の感受性と浸潤性の変化を前倒しして検討したいと考えている。口腔扁平上皮癌細胞における微小管阻害薬の感受性について平成30年度に予定していたが、本年度に検討することができたため、ヌードマウスの舌に高浸潤性OLC01を移植し、ヒト口腔癌細胞移植マウスを作成する。この高浸潤口腔癌モデルマウスに各微小管阻害薬を静脈内投与し、腫瘍重量を測定する。また、腫瘍、リンパ節転移部を観察後に切除、パラフィン切片を作成。微小管阻害薬処理による変化を検討したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は実験内容を一部変更し、検討するタンパク質を限定したため、予定していた抗体等を購入しなかったためそれに伴う経費は繰り越しとし、次年度に購入し、実験を行う予定である。
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