研究課題
近年,新しい分子標的薬の開発にもかかわらず依然として高浸潤口腔扁平上皮癌の生存率は依然として厳しい状況にある.我々は乳癌に対する微小管阻害薬が高浸潤口腔扁平上皮癌に対して,特異的に高い感受性を持ち,さらに低浸潤性癌細胞の表現型へ誘導することを見出した.以上の背景から本研究は口腔癌の高浸潤性獲得メカニズムと微小管の関連を解析し,高浸潤口腔扁平上皮癌の克服のための情報を提供することを目指している.浸潤様式の異なる口腔扁平上皮癌由来細胞株(3型0SC-20,4C型OSC-19,4D型OLC01),微小管阻害薬はエリブリン,ビンブラスチン,パクリタキセルを用いて感受性を調べた.結果,エリブリンはOSC-20,OSC-19よりも,OLC01に高い感受性を示し,エリブリンは他の微小管阻害薬よりもOLC01に対して高い感受性を示した.エリブリンの感受性は、TUBB3の発現低下と相関することがすでに論文で報告されているため,各細胞を各微小管阻害薬で処理,TUBB3の発現を調べた.OLC01をエリブリンで処理すると,TUBB3の発現が低下を認めた.一方で,感受性の低かったOSC19,OSC20については,TUBB3の発現低下は認められなかった.エリブリンの高感受性はTUBB3の発現低下と相関していた.以上の結果より,エリブリンはOLC01に対して高い感受性を持っていることがわかった.次に,in vivoにてOLC01細胞がエリブリンに対して高い感受性を持っているか調べた.舌にOLC01細胞を移植,計3回薬剤を尾静脈より投与,犠牲死した.結果,OLC01移植腫瘍においても,エリブリンは他の微小管阻害薬よりも高い感受性を示した.以上の結果より,エリブリンは高浸潤頭頸部癌に選択的に高感受性を示す可能性が示唆され,エリブリンの頭頸部癌への適応拡大の可能性があると考えられた.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)
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