• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

ヒト3次元組織体モデルを用いた口腔癌の浸潤・転移機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 17K11872
研究機関大阪大学

研究代表者

岩井 聡一  大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (10362675)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードヒト3次元組織体モデル / 癌の浸潤・転移 / 組織工学
研究実績の概要

(1)口腔扁平上皮癌株から複数の高転移能株を作成し、in vivoでのリンパ節転移能及びin vitroでの遊走能、浸潤能を解析した。ヒト口腔扁平上皮癌由来細胞株SAS及びHSC-3に緑色蛍光タンパク質 (GFP) 発現ベクターを導入したSAS-GFPとHSC-GFPをマウス舌に接種し,リンパ節転移形成後,再びin vitroに分離するin vivo selection を繰り返すことにより,高転移能株SAS-LM8、HSC-LM3を獲得した。これらの高転移能株においてin vivoでのマウスの頸部リンパ節転移実験、in vitroでの遊走能、浸潤能解析を行い、生物学的特性を解析した。
(2) 新しいヒト3次元生体組織モデルを作成し、口腔扁平上皮癌の浸潤能を解析した。フィブロネクチン(F)とゼラチン(G)を交互積層法によりナノレベルでコートした細胞を立体的に培養し、3次元組織体モデルの開発を行った。細胞集積法を用いて,下底に0.4 µmの小孔を有するメンブレンが張られた24 wellカルチャープレートのインサート内に,正常ヒト皮膚線維芽細胞 (NHDF)10層にヒト皮膚リンパ管内皮細胞 (HDLEC)1層をサンドイッチした構造,即ちNHDF:HDLE:NHDFを5:1:5で有する三次元組織体を構築した。すなわち、リンパ管網(及び血管網)を有するヒト3次元真皮組織体モデルを作成した。この組織体上にヒト口腔癌細胞を播種し、下底まで癌細胞が遊走・浸潤し到達する過程を観察した。この3次元生体組織モデルを用いた、癌細胞の浸潤解析の結果は、in vivo 及び従来の2次元培養に基づく遊走・浸潤能の解析法と矛盾せず、癌細胞が遊走・浸潤する過程を明視化することができた。この結果、ヒト3次元組織モデルが、in vivoに近い、癌細胞の浸潤過程を解析する有用なモデルとなりうることを示すことができた。
(3)口腔扁平上皮組織の作成を行った。さらに、ヒト3次元真皮組織体モデルの上に、ヒトケラチノサイトを播種、培養し、ヒト3次元口腔粘膜モデルを作製することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで、口腔癌細胞の浸潤・転移に関するシグナル伝達経路の解析を進めてきた。それらの成果を基に、高転移株を複数種確立し、解析を進めた。
研究期間中に何をどこまで明らかにしようとしたか”という目標設定に対して検討した。(1) 高転移能株を複数の口腔扁平上皮癌株で作成し、in vivoでのリンパ節転移能及びin vitroでの遊走能、浸潤能を解析する。遊走、浸潤に関連するWnt シグナル経路の因子を同定する。
(2) 新しいヒト3次元生体組織モデルを用いて、口腔扁平上皮癌の転移能・浸潤能の解析し、浸潤過程におけるタンパク質発現、遺伝子発現を同定する。 3次元生体組織モデルにおいて、より生体に近いリンパ管、血管ネットワークを構築する。それにより、癌細胞がリンパ管や血管に浸潤する過程を解析する。
(3)ヒト3次元口腔扁平上皮組織の作成を行う。
(1)に関しては当初の目的をほぼ達成した。(2)(3)の研究は現在進行中であり、その成果は学術論文として公開することができた。

今後の研究の推進方策

(1)ヒト3次元組織体モデル上に癌細胞を播種し、下底まで癌細胞が遊走・浸潤し到達する効率を測定すると同時に浸潤する過程において時期特異的に発言するタ
ンパク質、遺伝子を同定する。(1)において、高転移能株において有意に発現の差を認めたWntシグナル経路関連因子等について、3次元生体組織モデルの浸潤途
中の組織標本を作成し、その発現を解析することによって、生体における浸潤過程で発現機能する因子を同定する。
(2)ヒト3次元生体組織モデル中に、ヒト皮膚リンパ管内皮細胞(HDLEC)やヒト血管内皮細胞(HUVEC)等を培養し、管腔形成させたリンパ管或いは血管ネットワーク
を作成する。より生体に近い管腔構造を有し、長く分枝したネットワークを開発する。
(3)ヒト3次元口腔扁平上皮組織の作成を改善し、疾患モデルとした臨床応用を目指す。

次年度使用額が生じた理由

当初の計画どうりに進んでいます。論文掲載などの予定が繰り越したことによります。平成31年度は、研究の完遂と発展のための実験を行い、論文投稿し、成果を学会で発表する予定です。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Three-dimensional cultured tissue constructs that imitate human living tissue organization for analysis of tumor cell invasion2018

    • 著者名/発表者名
      Iwai Soichi、Kishimoto Satoko、Amano Yuto、Nishiguchi Akihiro、Matsusaki Michiya、Takeshita Akinori、Akashi Mitsuru
    • 雑誌名

      Journal of Biomedical Materials Research Part A

      巻: 107 ページ: 292~300

    • DOI

      10.1002/jbm.a.36319

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 脈管系を含む三次元生体組織モデルを用いた口腔扁平上皮癌の遊走・浸潤能の解析2018

    • 著者名/発表者名
      西山今日子、岩井聡一、岸本聡子、松崎典弥、赤木隆美、明石 満
    • 学会等名
      第17回日本再生医療学会総会
  • [学会発表] Novel analysis of cancer cell invasion using a three-dimensional cultured tissue model mimics human tissue organization2018

    • 著者名/発表者名
      Soichi Iwai, Satoko Kishimoto, Kyoko Nishiyama, Michiya Matsusaki, Takami Akagi, Mitsuru Akashi
    • 学会等名
      EACR25 Amsterdam Netherland
    • 国際学会
  • [学会発表] Analysis of tumor cell invasion using three-dimensional cultured tissue model with blood/lymph-capillaries network2018

    • 著者名/発表者名
      Kyoko Nishiyama, Soichi Iwai, Satoko Kishimoto, Narikazu Uzawa, Mitsuru Akashi
    • 学会等名
      第77回日本癌学会総会
  • [学会発表] Novel analysis system of cancer cell invasion using a three-dimensional cultured tissue model mimics human tissue organization.2018

    • 著者名/発表者名
      Soichi Iwai, Satoko Kishimoto, Kyoko Nishiyama, Michiya Matsusaki, Takami Akagi, Mitsuru Akashi
    • 学会等名
      EACR-AACR-ISCR Conference The cutting Edge of Contemporary Cancer Research
    • 国際学会
  • [学会発表] 細胞コーティング技術を用いた三次元培養口腔歯肉・粘膜モデルの開発2018

    • 著者名/発表者名
      西山今日子、岩井聡一、赤木隆美、明石満
    • 学会等名
      第40回日本バイオマテリアル学会

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi