研究課題/領域番号 |
17K11875
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
浜名 智昭 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 助教 (40397922)
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研究分担者 |
岡本 哲治 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 教授 (00169153)
林堂 安貴 広島大学, 病院(歯), 講師 (70243251)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | α2-アンチプラスミン / プラスミン / E-カドヘリン / センダイウイルスベクター / 口腔癌遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
プラスミンは細胞外基質蛋白に対し強い分解活性を示すほか,他の不活性型蛋白分解酵素を活性化し,がんの浸潤・転移を制御していると報告されている.本研究者は,プラスミンが,細胞間接着分子であるE-カドヘリンを切断し,がん細胞の分散能を亢進することを報告し,さらに,プラスミンが癌細胞の増殖能を亢進することを示してきた.すなわち,プラスミンは,細胞外基質蛋白分解系の中心的な役割を果たすほか,E-カドヘリンをプロセシングすることで,がん細胞の分散能と増殖能を亢進させ,がんの浸潤・転移を促進していると思われる.従って,プラスミン活性の阻害は,癌細胞の蛋白分解活性を抑制するだけでなく,分散能と増殖能を低下させ,がんの浸潤・転移を抑制すると推測している. これまでの研究で,プラスミン阻害物質であるα2-アンチプラスミンは,in vitroにおいて扁平上皮癌のE-カドヘリンのプロセシングを抑制し,細胞分散能を抑制していた.さらに,α2-アンチプラスミンの遺伝子導入細胞は,in vitroでの増殖能が低下しており,in vivoでは造腫瘍能が著しく抑制されていた. 今回,高い遺伝子発現能を有し,かつ遺伝毒性がないセンダイウイルスベクターにα2-アンチプラスミン遺伝子を搭載し,腫瘍組織内へ直接投与することで,in vivoにおいてα2-アンチプラスミン蛋白の発現を,高効率で安全に誘導し,口腔癌の浸潤・転移を制御する,新しい口腔癌遺伝子治療の開発研究を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト肝臓のmRNAよりRT-PCRにて増幅したα2-アンチプラスミンのopen reading frameを含む領域を,センダイウイルスミニプラスミドに組み込みプラスミドDNAを調整し,α2-アンチプラスミン遺伝子搭載センダイウイルスベクターを回収・保存して,扁平上皮癌細胞へα2-アンチプラスミンの遺伝子を導入している.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では, センダイウイルスベクターを用いて,α2-アンチプラスミン遺伝子を口腔扁平上皮癌細胞に導入して,α2-アンチプラスミン遺伝子導入細胞のin vitroでの細胞分散能,細胞増殖能,E-カドヘリンおよび細胞増殖関連蛋白発現を検討する.つぎに,in vivo での造腫瘍能と転移能を検討し,さらに形成した腫瘍でのE-カドヘリン蛋白および増殖関連蛋白の発現を検索する.その後,扁平上皮癌細胞のヌードマウス形成腫瘍に,α2-アンチプラスミン遺伝子搭載センダイウイルスベクターを直接注入し, 腫瘍組織中でのα2-アンチプラスミン蛋白の発現とその増殖能に与える影響および転移抑制効果を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度はセンダイウイルスベクターを用いて,α2-アンチプラスミン遺伝子を口腔扁平上皮癌細胞に導入して,遺伝子導入細胞のin vitroでの生物活性を検討するため予算とほぼ同額を使用した.今後,遺伝子導入細胞のin vivo での造腫瘍能と転移能の検討や形成した腫瘍でのE-カドヘリン蛋白および増殖関連蛋白の発現を検索するために交付金を使用予定である.
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