研究実績の概要 |
悪性腫瘍の治療を困難にする最も煩わしい現象は転移である。これまで、癌転移モデルとして癌細胞株をヌードマウスに移植した in vivo selection が頻用されているが、これは免疫細胞からの攻撃を反映したものではなかった。そこで、一例の口腔扁平上皮癌患者より原発巣の癌細胞株と後発頸部リンパ節転移巣から癌細胞株を樹立し、頸部リンパ節よりリンパ球を保存した。本研究では、リンパ節に到達した初期の癌細胞が、いかに免疫細胞の攻撃から回避して増殖し転移を成立させるのかを解明することである。これにより、新たな癌免疫療法の開発に繋がるものと期待される。 H29年度は、原発巣細胞(WK2)より single cell cloning を限界希釈法によって行った。それらの細胞を in vitro において、MTT assay による増殖能、Wound healing assay による遊走能、Sphere Forming Assay による自己複製能を調べ、生物学的特性の違いにより5種類のクローンを分離・培養した。同様に、後発転移巣細胞(WK3)より生物学的特性の違いによりを5種類のクローンを分離・培養した。 原発巣クローン細胞(WK2-1,2,3,4,5)にGFP遺伝子導入を行った。また、後発転移巣クローン細胞(WK3-1,2,3,4,5)にRFP遺伝子導入を行った。 今後は、原発巣クローン細胞(WK2-1,2,3,4,5-GFP)を8週齢のヌードマウス(BALB/cAJcl-nu/nu)の舌に接種し、腫瘍体積100mm3 or 2ヵ月経過した時点で屠殺して、舌腫瘍形成と頸部リンパ節転移の有無を確認予定である。
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