研究課題/領域番号 |
17K11879
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
尾木 秀直 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (10315426)
|
研究分担者 |
今村 隆寿 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (20176499)
田中 拓也 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (30631767)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 舌癌 / C5a受容体 |
研究実績の概要 |
C5a受容体発現癌細胞に対するC5aの作用の検討 内因性C5aによる癌細胞への作用を調べるために、Balb/cマウスの皮内に同種同系統のマウス癌細胞のRenca細胞を抗BSA抗体と一緒に注射し、抗原であるBSAの尾静脈注射で癌接種部に自己免疫病モデルであるアルザス反応を誘導した。コントロール細胞に比較してC5a受容体(C5aR)発現細胞の方がアルザス反応による内因性C5a産生によって腫瘤径が7日目で1.4倍、14日目で1.6倍大きくなった。アルザス反応を誘導しない場合は両細胞の腫瘤の大きさに有意な差はみられなかった。癌接種部皮膚組織標本を抗CD11b抗体と抗Ly6g抗体で蛍光免疫染色し、両抗体に共に陽性の骨髄由来抑制細胞(MDSC)の浸潤を調べると、アルザス反応でC5aR陽性癌細胞および陰性癌細胞接種皮膚で有意に数が増加していたが両癌細胞部での差はみられなかった。ヒト癌細胞HuCCT1細胞をヌードマウスに尾静脈から注射し肺での結節形成を調べると、6週間後にC5aで刺激されたC5a受容体陽性細胞は非刺激C5a受容体陽性細胞やC5a刺激C5a受容体陰性細胞に比較して大きくかつ数倍の数の肺結節を形成した。以上より、C5aは数日間のin vitro培養での癌増殖促進作用は観察されていないが、C5a-C5aR系が潜在的に癌増殖亢進作用をもち、C5aによるCD8+ T細胞の抗腫瘍反応を抑制するMDSC細胞の動員も関与して腫瘤形成が亢進すると考えられた。この作用は自己免疫病をもつ癌患者の悪い予後に関与する機序の一つとして提唱される。さらに、C5aによるC5a受容体を介した転移結節形成促進作用も明らかになった。 C5a-C5a受容体系をターゲットにした治療法の試み C5a受容体拮抗剤W-54011によって癌細胞のC5aによるC5a受容体発現癌増殖促進作用、および浸潤亢進作用が抑制されることが解った。今後、マウスへの癌移植系を使ったC5a受容体拮抗剤W-54011の全身投与による癌抑制効果を調べる計画である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
C5a受容体発現を調べた検体数が少なく臨床的なパラメーターや生存率の情報収集が遅れているため、統計学的な解析に至っていない。マイコプラズマの感染等があって癌細胞株の培養に期間を要し、C5a受容体遺伝子導入による強制発現細胞株とsiRNAによる発現抑制細胞株作製を行う舌癌細胞株の確率ができていない。
|
今後の研究の推進方策 |
舌癌組織C5a受容体発現研究については、症例数を増やし、かつC5a受容体発現と癌進展度、転移、患者予後との関係について統計学的に解析を行って相関を明らかにする。培養細胞のC5a受容体発現については、抗菌薬で癌細胞のマイコプラズマ駆除を行い、感染が無いことを確認した癌細胞を用いてimmunoblottingによって発現量を確認し、今後の研究に使用するC5a受容体高発現株と発現抑制株を作製する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度の実験予定が遅れたため、関連する試薬等を購入しなかった。
|