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2018 年度 実施状況報告書

抗癌剤曝露依存的に活性化されるEphA4 を標的とした新規治療戦略の構築

研究課題

研究課題/領域番号 17K11881
研究機関群馬大学

研究代表者

喜名 振一郎  群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (40422422)

研究分担者 金城 貴夫  琉球大学, 医学部, 教授 (30284962)
仲宗根 敏幸  琉球大学, 医学部附属病院, 講師 (40381214)
喜名 美香  琉球大学, 医学部附属病院, 医員 (80578914)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード高分化型 / 抗癌剤耐性 / EphA4
研究実績の概要

受容体型チロシンキナーゼ EphA4 は、子宮頸がん細胞株では、高分化型腫瘍由来細胞株であるCaski 細胞において高発現しており、他の低分化型腫瘍由来の子宮頸がん細胞株であるHeLa 細胞や、SiHa 細胞では発現していない。そこで、TCGA (The Cancer Gene Atlas) のデータを使って、実際の子宮頸がん患者の検体中におけるEphA4 の発現を検討した。その結果、高分化型腫瘍において、低分化型や中分化型と比較して発現が高い傾向が認められたものの、有意差は観察されなかった。EphA4 の発現をTCGA を使用して、他の固形腫瘍において観察したところ、頭頸部癌においては、高分化型腫瘍において有意に高発現していることが判明した。このことからEphA4 はいくつかの固形腫瘍においては、高分化型で高発現している可能性が示唆された。Caski 細胞に対してシスプラチンとEphA4 の阻害剤を併用したところ、細胞死の割合が、シスプラチン単独の場合と比較して、相乗的に増えていることをMTT assay により確認した。これらの実験結果より、EphA4 は高分化型子宮頸がん細胞株において、抗癌剤耐性に関与していることが判明した。昨年度までの実験結果と合わせて、論文を作成し、European Journal of Pharmacology 誌に投稿し、受理された(Kina S*, et al. 2018, Targeting EphA4 abrogates intrinsic resistance to chemotherapy in well-differentiated cervical cancer cell line, Eur J Pharmacol;840:70-78)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

EphA4 の発現は、子宮頸がん細胞株で、高分化型において高発現しているという事象が実際の腫瘍組織における発現を反映しているか常に疑問であった。そのため、TCGA のデータベースを活用して、発現レベルを検討した結果、子宮頸がん組織では、EphA4 は高分化型において発現が高い傾向を示したものの、有意差は観察されなかった。そこで、他の固形腫瘍において同様に、EphA4 の発現を分化度依存的に調べたところ、頭頸部癌などでは、高分化型組織において有意に発現が高くなっていることが確認できた。さらに、EphA4 阻害剤 はシスプラチンの抗癌剤感受性を相乗的に高めることが明らかになった。マイクロアレイを用いた実験から、抗癌剤依存的に活性化されたEphA4 の下流では、炎症性サイトカインのTNF-αの発現が高まり、抗炎症性サイトカインのIL-24 の発現が減弱するという予想外の結果も得られた。抗炎症性サイトカインであるIL-24 の発現減少が高分化型腫瘍周囲の炎症状態にどのような影響を与えるのかという当初予期していない研究課題が新たに加わった。これらの点をふまえて、学術誌に投稿し、受理されたこと(Kina S*, et al. 2018, Eur J Pharmacol;840:70-78)から、研究は、おおむね順調に進展していると判断している。また、昨年10月に急遽、琉球大学から群馬大学に異動となることとなり、赴任先での実験動物系の構築などがなかなか進展できない点が、今後の課題である。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策としては、群馬大学医学部腫瘍薬理学講座に異動したこともふまえて、precision medicine やゲノム医療という分野で研究の新展開をはかりたい。群馬大学において腫瘍の検体を用いて解析すべく、倫理審査委員会への書類作成などまた一から開始するため、研究の推進力は減じることが予想される。しかしながら、腫瘍薬理学講座で蓄積されている次世代シークエンサーを用いた解析法を駆使し、EphA4 が関与している高分化型腫瘍特有のシグナル経路の解析などを推進していく予定である。さらに、前年度までに得られた実験結果より、抗癌剤暴露後にEphA4 が活性化されると、炎症性サイトカインの発現が増大しつつ、抗炎症性サイトカインの発現が減弱するという興味深い現象が判明している。この現象をふまえ、高分化型腫瘍が抗癌剤暴露により、どのような腫瘍微小環境が形成されるのかということを、特に炎症状態の形成過程に注目し、低分化型腫瘍と比較することで、明らかにしていく予定である。また、現在着目している腫瘍細胞としては、口腔癌および、子宮頸がんであるが、他の固形腫瘍、例えば卵巣がんなどにおいても、Eph ファミリーが分化度依存的に発現しているのか、発現していないのであればどのような受容体型チロシンキナーゼが分化度依存的に発現しているのか検討していく。腫瘍が形成される臓器によらず、高分化型腫瘍の抗癌剤耐性機構に一般則のようなものがあるのであれば、その現象やメカニズムの解明に取り組みたい。

次年度使用額が生じた理由

当該年度の途中(10月)に所属機関が琉球大学から、群馬大学へと変更になりました。そのため、研究が途中段階で中断せざるを得なくなりました。科研費の移管手続きも4か月近くにおよび、この間、物品の科研費による購入等は一切できませんでした。そのため、科研費使用ができない期間が4か月近くにおよび、計画当初の予定より実験の進行が遅滞しているのが、次年度使用額が生じている主な理由です。今年度は、群馬大学腫瘍薬理学に所属することになったことをふまえて、特にゲノム医療を意識した研究に重点をおいてみようかと考えております。そのため今年度の研究費の使用用途に関しては、次世代シークエンサーを活用した実験ができないかと考えており、そのための研究経費に使わせていただきたいと考えております。具体的には、高品質のRNA を精製できるキットなどを購入する等です。また、群馬大学口腔外科との共同研究も検討しております。そのため、数種類の口腔癌細胞株の購入を行い、実験を開始する予定です。基本的に異動したことによる、初期設備投資の性格をもった研究経費として
今年度予算を使用していく予定です。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] Outcomes after up-front surgery and metronomic neoadjuvant chemotherapy with S-1 or UFT for early tongue squamous cell carcinoma2018

    • 著者名/発表者名
      Kina Shinichiro、Nakasone Toshiyuki、Kinjo Takao、Nimura Fumikazu、Sunagawa Nao、Arasaki Akira
    • 雑誌名

      Clinical Oral Investigations

      巻: - ページ: 1-6

    • DOI

      10.1007/s00784-018-2689-2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Targeting EphA4 abrogates intrinsic resistance to chemotherapy in well-differentiated cervical cancer cell line.2018

    • 著者名/発表者名
      Kina S, Kinjo T, Liang F, Nakasone T, Yamamoto H, Arasaki A.
    • 雑誌名

      Eur J Pharmacol.

      巻: 840 ページ: 70-78

    • DOI

      10.1016/j.ejphar.2018.09.031.

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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