研究課題/領域番号 |
17K11882
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小泉 敏之 横浜市立大学, 附属病院, 講師 (80323575)
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研究分担者 |
來生 知 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (30545059)
藤内 祝 横浜市立大学, 医学研究科, 客員教授 (50172127)
光藤 健司 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (70303641)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 腫瘍治療電場 / 低侵襲性治療 |
研究実績の概要 |
近年のがん治療においては単に生存率の向上を目指すだけではなく、低侵襲かつ生存率向上に寄与する治療法の開発が求められている。我々は再発膠芽腫治療に用いられている腫瘍治療電場 (Tumor Treating Fields, 以下TTF)に着目した。本研究は、TTFの口腔癌に対する有効性を確認し、化学療法との併用による抗腫瘍効果増強の可能性について検討することで口腔癌の新たな治療法の確立を目指す。平成29年度は口腔癌細胞株を用いてTTFの口腔癌に対する抗腫瘍効果の有無について検討を行った。検討項目は以下である。 1.交流電場印加による抗腫瘍効果の検討:ヒト由来舌扁平上皮癌細胞(OSC-19)を用いて交流電場の強度別、印加時間別にその抗腫瘍効果を観察し、最も抗腫瘍効果が高い条件の検討を行った。 2.アポトーシスの誘導:アポトーシスを誘導された細胞数について電場印加のサンプルと無刺激サンプルとで比較し交流電場刺激によるアポトーシスの誘導について検討を行った。 3.細胞周期を停止した細胞の観察:TTFは交流電場印加によって細胞の微小管の結合を阻害し、細胞周期を止めることが分かっており、電子顕微鏡を用いた観察 によって微小管の結合を阻害した状態や、蛍光染色によって微小管の形態変化をきたしている様子を観察することで、抗腫瘍効果発現の確認を試みる。 平成30年度も平成29年度に引き続き培養細胞を用いた電場印加の条件検討を行った。上記検討項目に対して繰り返しの実験を行い、抗腫瘍効果が最も強くみられる条件では、アポトーシス誘導の増加や細胞周期変化がみられ、コントロールと比較しても有意な差を認めた。平成30年度は動物実験にも着手し、腫瘍細胞を免疫不全マウスの皮下に移植し生着させた口腔癌モデルマウスに対して電場を印加した時の腫瘍増殖の経過を観察した。動物実験における最適条件の検討を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交流電場印加による抗腫瘍効果を培養細胞(ヒト由来舌扁平上皮癌細胞(OSC-19))を用いて検討を行った。また、アポトーシスの誘導についての検討も行った。繰り返しの検討によって抗腫瘍効果の高い条件を決定した。動物実験における最適条件の検討も行っており時間を要しているが、進捗状況としてはおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っている動物実験における最適条件の検討を継続する。培養細胞による条件設定との整合性を確認する。また、今後は最適条件を用いてシスプラチンの併用による効果を検討する。これまでの動物実験と同様に、腫瘍細胞を免疫不全マウスの皮下に移植し生着させた口腔癌モデルマウスを用いて、電場の印加とシスプラチンの投与を行う。電場とシスプラチンを併用することによって相乗的な効果が期待できるが、毒性の増悪なども懸念される。抗腫瘍効果のみならず、副作用や毒性の有無の検討も行う。副作用の検討としては死亡までの日数、マウスの体重減少、行動異常、各臓器の組織学的変化を観察 する(H-E染色)。また、電場印加した部位の皮膚障害にも注目して観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養細胞や動物を用いた検討について、事前予想通りとなった項目があり、次年度使用額が生じた。次年度も引き続き、条件決定につての検討は継続するため、それに対して使用する。
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