研究課題/領域番号 |
17K11887
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
川又 均 獨協医科大学, 医学部, 教授 (70224847)
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研究分担者 |
内田 大亮 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (20335798)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / マイクロアレイ / クラスタリング / 唾液腺 / 口腔粘膜 / 骨髄 |
研究実績の概要 |
遺伝子発現の網羅的解析により,口底扁平上皮癌6症例を用い,生検材料からRNAを抽出し,32,878種類の遺伝子が搭載のHuman Genome Survey Array (Applied Biosystems社製)にて遺伝子発現の検索を行い,AB1700 Chemiluminescent Microarray Analyzerにて読み取り後,GeneSping GX 7.3で解析を行った.このアレイを用いて正常重層扁平上皮と小唾液腺の遺伝子発現の差が5倍以上ある遺伝子845個を同定しており,これらの遺伝子を用いてクラスタリング解析を行うと,口腔扁平上皮癌は2つのグループ(唾液腺グループと粘膜重層扁平上皮グループ)に分けることができた.クラスタリングできる最小の組み合わせを行うと12個の遺伝子により正確にグループ分けできることが明らかとなった. さらに,WEB上に公開されている口腔癌の遺伝子発現プロファイルを約167症例の口腔扁平上皮癌を同様の方法でクラスタリングを行うと,やはり2つグループに分けることができることを証明した.さらに,臨床検体を用いた後ろ向き試験により,これら2つのグループには予後,生物学的悪性度に明らかな差があることを明らかにした(Int J Cancer 誌でrevision中). さらに,凍結切片,あるいはホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いて,XY染色体プローブを用いてFISHをおこなう.Y染色体はCy3で,X染色体はDigoxigeninで標識して検出を行う.既に予備実験で,ホルマリン固定パラフィン包埋切片でもFISHが可能な条件は設定しており,データ解析はLeica CW-4000を用いて行う.予備実験として骨髄移植後の口腔扁平上皮癌と,通常に発生した口腔扁平上皮癌6症例で検索を行い,2症例が骨髄由来である可能性を示した(投稿準備中).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
われわれの臨床サンプルで検証したマイクロアレイ,クラスタリングの結果が,パブリックデーターベースに登録されている口腔扁平上皮癌でも同様の観察が可能か否かを行うために多大な労力を要した.その結果,少数のサンプルで観察した現象は,多数のサンプルでも同様であることが明らかとなった.また,臨床データもその精度を見直し,コホート表を作成し,単変量解析,多変量解析をやり直すことにより,より信頼度の高い結果が得られた. 骨髄移植患者で口腔癌が発症したサンプルの追加があり,性別の違うドナーから移植された口腔癌患者でFISHを行いX染色体,Y染色体の検索が進められた.予想通り,ドナー骨髄細胞由来の口腔扁平上皮癌は多くはないが,何例かは存在することが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
口腔扁平上皮癌が粘膜幹細胞由来,唾液腺幹細胞由来が存在し,その生物学的悪性度,予後に差があることは明らかであり,今後は如何にハイスループットな鑑別診断を行うかが重要であり,我々が同定した9因子を組織アレイで免疫染色を行う条件を早急に確立しなければならない. 骨髄由来細胞による口腔癌の発癌に関しては,どのようなタイプの幹細胞由来であるのかを同定すると同時に,骨髄移植患者以外の口腔扁平上皮癌での骨髄幹細胞由来症例を同定するための方法を確立しないといけない.
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次年度使用額が生じた理由 |
免疫染色に試用できる抗体の選択に苦慮している.その分を遺伝子解析費用に充てているが,次年度は免疫染色にてハイスループットなシステムを構築することができると予想され,その費用を使用予定である.
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