研究課題/領域番号 |
17K11888
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
柴原 孝彦 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (50178919)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 口腔がん検診 / がん検診システム / バイオマーカー / 光学機器 |
研究実績の概要 |
本年度は、次世代口腔がん検診システムに向けたクリニカルパスとアルゴリズムの最適化を試みた。一般開業歯科医(GP)への啓蒙と専門治療機関への受け入れ態勢の標準化に着手した。GPに対する口腔がんに対する啓蒙と本システムに関する情報共有の目的で、地域歯科医師会と協力しGPを対象とした講演会、講習会を全国30都道府県において行った。 前年度までに整備したバーチャル検診センターネットワークを実際に運用し問題点を抽出した。光学機器を実際のバーチャル検診センターネットワークに導入し、「検診医療機関(GP)とコントロールセンターで問題なく画像判断が可能か否かを検証し、可能であることを確認した。 光学機器で描出された病変部の特性を解析することで、口腔がん発症のリスク評価への有用性を検討した。具体的には、口腔粘膜観察用光学機器 IllumiScanを用いて,口腔扁平上皮癌の視覚的評価および画像ソフトを用いた半定量的評価を行い、有用性について検討した。対象は、口腔扁平上皮癌症例(stageⅠ・Ⅱ)30例であった。視覚的評価においては,29例でFluorescence Visualization Loss(FVL)を認めた(96.6%)。FVLは、辺縁は不明瞭、不均一な症例を多く認めた。半定量的評価においては、面積は6,629~595,238pixels(平均97,982)、輝度は9.6~85.4 cd/m(平均37.9)、輝度の標準偏差は2.7~27.8(平均9.7)、輝度の変動係数は0.09~0.38(平均0.23)であった。対照の面積は301~2,644pixels(平均843)、輝度は57.7~87.6 (平均72.1)であった。輝度率は、41.5~88.7%(平均62.9)であった。口腔粘膜における光学機器は、本次世代口腔がん検診システムにおいても有用なツールである可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の計画では、①次世代口腔がん検診システムに向けたクリニカルパスとアルゴリズムの最適化を行うこと②一般歯科医院への啓蒙と高度専門治療機関への受け入れ態勢の標準化に着手すること③前年度までに整備したバーチャル検診センターネットワークを実際に運用すること④光学機器を実際のバーチャル検診センターネットワークに導入し、有用性を検討することの4項目が目標であった。①および③については、前年度までに整備した、一般開業歯科医がチェアサイドで、(公社)日本口腔外科学会認定専門医の意見を聞き、診察のサジェスション(経過観察、要再検査、基幹病院へ照会、その他)を得ることができるwebシステムを実際に運用できた。本システム利用による一般開業歯科医からの相談件数は、2019年3月までに1700件を超えた。②については、口腔がんに対する啓蒙と本システムに関する情報共有の目的で、地域歯科医師会と協力しGPを対象とした講演会、講習会を全国30都道府県において行うことができた。また、口腔がん検診のための検診手法の習熟、標準化のための教育手段としてマニュアルを整備できた。④については光学機器を実際のバーチャル検診センターネットワークに導入することができた。以上のことから、概ね研究計画に基づいて研究を施行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、次世代口腔がん検診システムに向けたクリニカルパスとアルゴリズムの最適化を行う。 平成31年度は研究最終年度となるため、これまでに得られた研究成果について医学論文作成、各種関連学会にて発表を行い、成果の公表を行う 。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、前年度までに整備したバーチャル検診センターネットワークを実際に運用すること、および一般歯科医院への啓蒙と高度専門治療機関への受け入れ態勢の標準化に着手するということに時間を費やした。一方で、光学機器を実際のバーチャル検診センターネットワークに導入し、有用性を検討することについては、扁平上皮癌に対してのみ解析するに留まった。次年度は白板症や扁平苔癬といった口腔扁平上皮癌と鑑別を要する口腔粘膜疾患についての光学機器の有用性を検討する予定であり、その費用として使用することを考えている。また、平成31年度も引き続き、次世代口腔がん検診システムに向けたクリニカルパスとアルゴリズムの最適化を行う予定である。また、平成31年度は研究最終年度となるため、これまでに得られた研究成果について医学論文作成、各種関連学会にて発表を行い、成果の公表を行う予定である 。
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