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2018 年度 実施状況報告書

5-ALAを用いた口腔癌の蛍光診断および術中蛍光ナビゲーションシステムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K11889
研究機関鶴見大学

研究代表者

佐藤 徹  鶴見大学, 歯学部, 准教授 (30170765)

研究分担者 舘原 誠晃  鶴見大学, 歯学部, 講師 (90380089)
横田 利夫  鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (60737956)
井出 信次  鶴見大学, 歯学部, 助教 (00611998)
寺田 知加  鶴見大学, 歯学部, 助教 (40460216)
里村 一人  鶴見大学, 歯学部, 教授 (80243715)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード表在癌 / ヨード生体染色 / 光線力学的診断 / 5-アミノレブリン酸 / プロトポルフィリンⅨ / 上皮性異形成 / 色度
研究実績の概要

口腔粘膜の初期癌病変は表在性の平坦な病変として出現し、炎症性病変との肉眼的鑑別が困難な場合が多いので、早期発見が遅れる場合がある。非侵襲的補助的診断法の一つであるヨード生体染色法では、その刺激性やアレルギー反応、角化粘膜への適用不能などの問題点がある。一方最近、特殊光を応用した非侵襲的診断法である光線力学的診断(PDD)が脳腫瘍などに応用され、その有用性が示されている。なかでも副作用が少ない光感受性薬剤である5-アミノレブリン酸(ALA)を用いたPDDが現在最も注目されている。生体外から投与されたALA は光反応性のあるプロトポルフィリンIX(PpIX)に変換され、405nmの青紫色励起光にて636nmと705nmの赤色蛍光を発する。PpIX は正常細胞では素早く代謝されるが、腫瘍性細胞ではPpⅨ代謝酵素活性が減弱しているためPpⅨが細胞内に蓄積することから、この赤色蛍光で腫瘍性病変のみを同定できる。
この原理を応用し、口腔粘膜の表在性癌やその前駆病変を疑う患者に対して、文書での説明と同意を得た後にALA含浸ガーゼを病変に貼付し、当講座とウシオ電機株式会社で開発した小型蛍光診断装置を用いて赤色蛍光を観察した。これらの病変の赤色蛍光の有無と生検あるいは切除検体での病理診断とを比較したところ、癌を含む中等度上皮性異形成以上に対する感度は100%、特異度は88.2%と良好な検出率であった。
診断の客観性を得る目的で撮像したデジタル画像を画像解析装置により色度分析し、X成分(赤味の強さ)の分布を測定した。X成分の最高値をその病変の代表値として統計処理にてROC曲線を描記したところ、カットオフ値を0.41に設定すると中等度上皮性異形成から扁平上皮癌までの病変と、軽度異形成や異形成を示さない病変とを極めて高い正診率で鑑別可能であることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

臨床症例の蓄積と小型蛍光診断装置により撮像された画像の解析では更に症例が蓄積され、口腔癌のスクリーニング検査に向けたデータの客観的な数値化による診断精度の検討に集中したので、この部分については良好に進行している。すなわち色度のX値(赤成分の強さ)の最高値を基準として、X値0.41をカットオフ値に設定すると癌を含む中等度上皮性異形成以上とそれ以外とを高精度で鑑別できることが判った。しかし切除標本における上皮異形成の客観的判断を目的とした各種免疫組織化学の結果と蛍光診断装置による画像との対比についてはやや遅れている。HE染色所見を補完するための上皮性異形成の程度の判断については、サイトケラチン13、サイトケラチン17、p53タンパク、Ki-67などの免疫組織化学的反応を指標として検討を開始しているが、5-アミノレブリン酸の代謝酵素を直接的、あるいは間接的に病理組織切片で確認出来る方法は未確定である。

今後の研究の推進方策

現在使用中の小型蛍光診断装置内に、コンパクトさを損なわずに自然光下での画像も赤色蛍光画像と同一視野で撮影できる装置を組み込むことができるかを検討する。
赤色蛍光の診断精度検討に当たっては、色度X(赤成分の強さ)の至適カットオフ値が0.41となることが判明したが、将来のスクリーニング検査を想定すると、撮像場所の照明環境に影響を受けにくいことが望まれる。蛍光画像にて健常部位は緑色蛍光を呈するので、色度Y(緑成分の強さ)を分母としたX(赤成分)/Y(緑成分)についても、同様にROC曲線を作成してX成分単独での場合と比較し、検出精度の差や室内照明によに差があるかを検討する。さらにサーフェイスプロット法により描いた色度X(赤成分の強さ)の分布と、病変の全割病理標本におけるサイトケラチン13、サイトケラチン17、p53タンパク、Ki-67の免疫組織学的反応を比較し、X成分の強さと異形成の程度が相関するか検討する。
これらの検討を進めて第64回日本口腔外科学会学術大会においてその結果を発表し、本検査法を口腔癌スクリーニング検査の手段として実用化できるように研究をさらに推進してゆく。

次年度使用額が生じた理由

(理由)蓄積された臨床例の診断精度の検討を優先すべきとの判断から、病理標本の免疫染色が遅れたため抗体類の購入資金に繰越金が生じた。
(使用計画)次年度には前記理由により未使用になった繰越金を免疫組織化学に用いる抗体類を追加購入し、未だに選択できていない5-アミノレブリン酸代謝酵素の病変内分布のマーカーとなり得るものを購入し、先行している臨床症例における画像解析の結果と併せて、本研究を順調に進展させていく予定である。

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公開日: 2019-12-27  

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