研究課題/領域番号 |
17K11893
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
的場 あつ子 (青井あつ子) 東北大学, 歯学研究科, 助教 (70547257)
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研究分担者 |
正木 英二 東北大学, 歯学研究科, 教授 (40221577) [辞退]
水田 健太郎 東北大学, 歯学研究科, 教授 (40455796)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 短鎖脂肪酸受容体 / 疼痛制御 |
研究実績の概要 |
神経障害性疼痛は痛覚神経系の損傷により発症する難治性の慢性痛であるが、未だ有効な治療法が確立されていない。本研究は「腸内細菌叢が神経障害性疼痛を制御する鍵因子である」との仮説を基に、腸内細菌叢による神経障害性疼痛制御機構を解明する。さらに得られた知見を集積し、腸内細菌を利用した神経障害性疼痛に対する全く新たな治療法を開発する。 腸内細菌叢は食物繊維を発酵して短鎖脂肪酸であるプロピオン酸・酢酸・酪酸などを産生することが知られており、産生された短鎖脂肪酸は腸管から吸収され血行に入り、門脈を通過して肝臓へ到達する。90%以上の短鎖脂肪酸は肝臓で代謝されるが、わずかに残った短鎖脂肪酸は様々な臓器に運搬され、短鎖脂肪酸受容体:short-chain free fatty acid receptor(FFAR2およびFFAR3)に作用し、それぞれの作用を引き起こす。特に神経節にはFFAR3が発現しており、神経活動を制御していると考えられている。 本年度は、短鎖脂肪酸であるプロピオン酸・酢酸・酪酸による、細胞内カルシウムイオン濃度の変化について調査した。短鎖脂肪酸を投与すると、細胞内のカルシウムイオン濃度は一過性に増加し、その効果は、Giタンパク阻害剤、Gβγサブユニット阻害剤、PLC-β阻害剤等で抑制されることが明らかとなった。神経障害性疼痛の神経伝達機構には、カルシウムイオンも深く関わっており、阻害剤によってカルシウムイオンの濃度上昇を抑えることができれば、疼痛制御に応用可能と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付された助成金では無菌下でのラットの飼養・飼育が困難であるため、神経障害性疼痛の研究の予備研究として、腸内細菌叢が食物繊維を発酵して産生する短鎖脂肪酸(プロピオン酸・酢酸・酪酸)が、短鎖脂肪酸受容体(FFAR3)に対してどのような作用を及ぼすかを検討することとした。
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今後の研究の推進方策 |
腸内細菌叢が食物繊維を発酵することで産生される短鎖脂肪酸(プロピオン酸・酢酸・酪酸)が、短鎖脂肪酸受容体(FFAR3)に対して、投与時間や濃度を変化させた際にどのような作用を及ぼすかについて検討する。 また、FFAR3に対する、プロピオン酸、酢酸、酪酸の細胞内シグナリング伝達経路(主にPI3K/Akt経路とMEK/ERK経路)を探索することで、神経障害性疼痛制御のメカニズムを模索する。 さらに、神経障害性疼痛の神経伝達機構にかかわりのある電解質濃度の動向や、cAMP濃度を調べることにより、疼痛制御の治療法に役立つ因子を選出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の物品費は、既存の試薬や共通使用物品を利用することで、予定よりも金額を抑えることができた。本年度の物品費の残額は、次年度の物品費と合算し、試薬等の購入に使用する予定である。
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