研究課題/領域番号 |
17K11897
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
石川 恵生 山形大学, 医学部, 助教 (00466640)
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研究分担者 |
杉本 昌弘 東京医科大学, 医学部, 教授 (30458963)
北畠 健一朗 山形大学, 医学部, 医員 (60744456) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 唾液 / 多層オミックス解析 / タンパク質 / 代謝物 / 口腔癌 / 口腔前癌病変 / 口腔癌類似病変 / 口腔前癌病変類似病変 |
研究実績の概要 |
唾液は非侵襲に取得できるため、疾患検査が確立すれば医療機関以外でも採取・検査が可能となり、応用範囲が非常に広い。本研究では口腔癌・口腔前癌病変患者の唾液中に含まれる転写産物、タンパク質、代謝物を網羅的に測定し、これらを統合して多層オミックス解析を実施することで、口腔癌・口腔前癌病変スクリーニングマーカーを探索することを目的とする。申請者らは これまでにもマーカー探索を行ってきたが、個々の単独物質だけでは特異性が低いため、全ての測定技術を統合し、検証試験を行うとともに、新規マーカー探索も同時に行う。 またこれまでの研究の多くは、口腔癌患者を健常者からスクリーニングするバイオマーカーを探索するものがほとんどを占めている。われわれも唾液中のSAMやPipecolateが、健常者と比較して、口腔癌患者で高値を示し、高精度なバイオマーカーになりえる可能性を報告した。しかしながらこの研究は、「口腔癌患者」を「健常者」と高精度に区別することができる可能性を示しているにすぎない。口腔内には、口腔癌や口腔前癌病変だけでなく、細胞異型を伴わない白板症や扁平苔癬、口内炎、咬傷、辺縁性歯周炎など、視診や触診では判断が困難な「口腔癌・口腔前癌病変類似病変」が存在する。そのため口腔癌・口腔前癌病変のスクリーニングバイオマーカーの本来の目的は、健常者と口腔癌・口腔前癌病変を見分けることではなく、健常者だけでなく口腔癌・ 口腔前癌病変類似病変患者と口腔癌・口腔前癌病変を見分けることが最も望ましい。しかしこれまでの研究は、完全な健常者と口腔癌患者を比較するのみにとどまっていた。そこで本研究では、口腔癌・口腔前癌病変患者比較対照群として、健常者だけでなく口腔癌・口腔前癌病変類似病変患者も加えることで、歯科臨床の現実に即した研究デザインを組み立てた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の計画通り、口腔癌患者 50 名、口腔前癌病変患者 50 名、視診・触診で鑑別困難な口腔癌・口腔前癌病変類似疾患患者 150名(過形成等の細胞異型を伴わない白板 症 50 名、扁平苔癬 50 名、歯周炎 50 名)、口腔内病変を有さない健常者 100 名の唾液採取を完了させた。さらに採取した唾液中の代謝物、タンパク質測定など多層オミックス解析を行っている。すでに口腔癌、口腔前癌病変、扁平苔癬、細胞異型を伴わない白板症患者について、代謝物測定はほぼ完了している。またタンパク質測定についても、約半数の測定が終了している状況である。 測定が済んだものについては、統計学的解析を行い、口腔癌・口腔前癌病変を健常者と類似病変患者からスクリーニングするバイオマーカーを選定している。また副次的な解析も行い、口腔癌を健常者からスクリーニングするバイオマーカーや、口腔癌・口腔前癌病変を健常者からスクリーニングするバイオマーカーなども選定をしている。 上記の理由から概ね予定通りに研究が進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
唾液採取は、口腔癌、口腔前癌病変、細胞異型を伴わない白板症、扁平苔癬、歯周炎、健常者については、順調に採取できたが、口内炎、咬傷の患者がやや足りていないため、本年度も、特に口内炎患者、咬傷の患者を中心に唾液採取を継続して行う。またそれと並行して、唾液中物質である代謝物、タンパク質、RNAの測定を進める。測定が完了したところで、それぞれの物質のみでの解析だけでなく、全てを組み合わせた解析(多層オミックス解析)を行い、口腔癌・口腔前癌病変を、健常者・類似病変患者から高精度にスクリーニングするバイオマーカーの同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入は、キャンペーン期間を利用することにより想定より安く購入できた。また本年度は学会発表などの機会が少なく、旅費としての支出も少なかった。 また英語論文の投稿に伴う校正費用については、別経費を使うことができたため、また投稿料金がかからない雑誌への投稿を行ったため、想定よりも使用金額が低くなった。
次年度も、特に消耗品などをできるだけ安く購入することは行うが、十分な消耗品を購入し、繰り返しの測定、確証実験なども行う。また今年度までの結果を用いて、積極的に学会発表や、論文投稿も行う予定である。
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