研究実績の概要 |
本年度は、昨年度確立した骨芽細胞分化プロトコールを用いて、各細胞分化段階におけるマイクロアレイ解析を行った。これまでに確立した各分化段階(骨格系前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞前駆細胞、成熟骨芽細胞および骨細胞)の細胞集団において、total RNAを回収後、マイクロアレイ解析を行った。その結果、骨芽細胞分化に伴いマーカー遺伝子(Col1a1, Runx2, IbspおよびSp7)の発現上昇が確認された。さらに、破骨細胞分化誘導因子であるReceptoractivator of nuclear factor kappa-Β ligand (RANKL)の発現上昇が認められた成熟骨芽細胞の時期に注目し、その分化段階において発現が有意に変化する遺伝子群を、バイオインフォマティクス解析により同定した。その結果、615個の有意な発現上昇遺伝子と551個の有意な発現減少遺伝子が認められた。これらの変動遺伝子群を用いたGene ontology解析により、Focal adhesion、ECM-receptor interactionなどを含む複数のシグナルパスウェイの関与が明らかになった。変動遺伝子群には、シグナルパスウェイのリガンドや、細胞外分泌タンパク質をコードする遺伝子も含まれており、これらの因子は骨芽細胞成熟に伴いその発現が上昇し、破骨細胞の分化を調整する可能性が示された。そのため、現在、同定したシグナル因子の活性化剤および細胞外分泌タンパク質の破骨細胞分化に対する効果を検証するため、マウス大腿骨骨髄由来マクロファージの破骨細胞分化誘導系を用いた検証を進めている。
|