研究課題/領域番号 |
17K11899
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
脇田 亮 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (60376712)
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研究分担者 |
船山 ひろみ 鶴見大学, 歯学部, 講師 (00359530)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 気管支喘息 / フィトケミカル / カルシウムイオン |
研究実績の概要 |
研究者らは気管支喘息発作の機序の一つとして、気管支平滑筋細胞内でのcAMPを介した調節機構に注目している。また、その調節作用に影響を及ぼすものとして漢方生薬由来物質に注目し、気管支平滑筋調節機構の解明を目指してきた。そのなかでも苦参(Kushen)由来フィトケミカルを用い、気管支収縮の直接的調節機構、気管上皮由来のメッセンジャーを介した間接的な平滑筋調節機構、ならびに気管上皮の安定化作用の解明を目指している。 先行研究で、苦参配合漢方生薬合剤抽出物にはmyosin light chain(MLC)のリン酸化抑制すなわち平滑筋収縮抑制効果がみられた。そこでこれらの作用経路を検討するため、PKCを介する収縮系とPKAを介する抑制系の細胞内情報伝達経路を検討することとし、それぞれCPI-17とHSP-20のリン酸化を指標とした。その結果Kushen抽出物は主にcAMPシグナル伝達経路であるPKAを会した経路を活性化し、主にPKAを介した経路を調整したが、PKCを介した収縮系との関連に関してはまだ判明しておらず検討中である。これにはRhoAを介する経路の可能性が考えられる。また筋小胞体は平滑筋細胞の持続的収縮機構に関連し、小胞体上のチャネルを介して細胞内カルシウムイオン(Ca2+)濃度調節に重要な役割を果たしている。Kushen抽出物による筋小胞体内Ca2+濃度変化を観察するため、新規蛍光プローブと細胞内Ca2+濃度変化を観察するプローブを用い検討中である。変動電場を用いたイオントフォレーシスによる生体内への薬物取り込みに関してもビスホスホネート を対象に研究を進め、微小針付電極を試作し経皮吸収のさらなる効率化を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養関連保管設備の問題はほぼ解決し、新規細胞株・試薬による培養および反応性の再確認を行い、予定通りの培養が可能となっている。また筋収縮発現に影響する細胞内カルシウムイオン測定が可能な蛍光プローブの反応性の確認は終了している。しかしハイスループットアッセイが可能であった測定装置(所属施設の共用設備)が修理不能となり研究方法の変更が生じた。現在代替策としてカイネティックアッセイ可能なプレートリーダーでの測定に変更したものの作業効率は相当低下している。またCOVIC-19のパンデミックにより海外の研究協力者の所属する研究班と共同で行う予定であったKushen抽出物からのTrifolirhizin含有分画の再検討、およびオーガンバス法によるマウス摘出気管支の収縮力評価は中断している。さらに気管上皮細胞のムチン産生能を検討するためのqRT-PCR法によるMUC5AC mRNA測定も同様に国内のCOVID-19感染検査等の影響により、実施が延期されている。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況の改善策としては、本学の化合物ライブラリを利用した苦参含有成分Trifolrhizinと共通構造を有する代替化合物の探索や、分子量が同等かつ苦参への含有が認められるフィトケミカル類の検索で対象を絞り込み、[Ca2+]i測定頻度の短縮を図る。さらに代替フィトケミカルによる気管上皮/平滑筋細胞のPGs産生を評価し、Trifolirhizinとの同時存在下における影響を検討する。P前年度までの結果よりPGs等がメディエーターとして機能する可能性に基づき、EP2/EP4受容体阻害によるMLCリン酸化の抑制、ならびにcAMP産生によるPKAを介した経路による気管支収縮抑制作用に対象を絞り、アデニル酸シクラーゼ阻害剤およびPDE4阻害に対する影響を確認する。さらに、RhoAを介したCPI-17リン酸化の関与をU-73122/Y-27632の前処理よりPLCに依存しない収縮機構調節を評価することで細胞内伝達機序を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19パンデミックによる、研究中断要請やその後の研究室利用制限により、計画通りに研究が遂行できず、必要な実験器材・試薬を購入しなかった。また渡航・出張制限もあり、学会等情報収集や研究打合せなどの出張も行われなかった。これらの理由により次年度使用が生じた。 研究室の利用や新規実験の開始も許可され始め、徐々に研究再開の目途はついてきた。当初計画より遅延した分野においては、測定対象を絞り込み、また複数機器をも同時並行処理が要求され、使用量の増加するディスポ製品や各種試薬の購入に使用する。
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