研究課題/領域番号 |
17K11901
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
山口 聰 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 非常勤講師 (00280628)
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研究分担者 |
由井 伸彦 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (70182665)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 骨再生 / ポリロタキサン / VEGF / メラトニン / βーシクロデキストリン |
研究実績の概要 |
1.ポリロタキサンの分子可動性調節と成長因子導入による血管ネットワーク形成の促進 骨再生のみならず組織再生においては血管新生が重要である。そこで本研究では分子可動性の異なる硫酸化PRX 基板に VEGF を表面導入し、分子可動性調節と成長因子の表面導入がヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)のネットワーク化に与える影響について検討した。低分子可動性表面を持つPRXはHUVEC の細胞増殖を促進し、高分子可動性表面を持つPRX はその増殖を抑制した。この低分子可動性 PRX 基材に VEGF を表面導入したところ、血管内皮細胞接着分子や血小板由来増殖因子の遺伝子発現量が増加し、 HUVEC が長く連なったネットワーク構造の形成が促進された。これらの結果はPRX 表面の低分子可動性と VEGF の表面導入により血管内皮細胞のネットワーク化を効果的に促進したことを示唆している。 2. β-シクロデキストリン誘導体を用いたmelatoninとの包接錯体形成による細胞内取り込み量と骨分化誘導能の評価 melatonin (MLT)は主に松果体から分泌されるホルモンであり、近年では骨芽細胞分化誘導能を持つことが見出され、新たな骨再生法の手段として期待されている。しかし、MLTは難水溶性分子であるため水への溶解度の向上が骨再生応用への課題の一つとなっている。そこでPRXの構成成分であるβ-CDに着目した。β-CDは環状分子内面が脂溶性、外面は親水性という特異的構造を有している。高水溶性であるhydroxypropyl-β-CD (HP-β-CD)の添加によりMLT溶解量は濃度依存的に増加した。MC3T3-E1に対するHP-β-CD/MLT添加群はMLT添加群よりもMLT細胞内取り込み量が多く、ALP産生量や石灰化量が増加することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はポリロタキサンとVEGFによる血管ネットワーク形成に関する研究で成果を挙げることができ、論文発表および学会発表に至った。また、これまで研究を行なってきたBMP2に加え、新たな骨形成促進因子メラトニンをポリロタキサン構成成分であるβーシクロデキストリン と結合させることにより臨床応用できる可能性が開け、論文発表および学会発表に至った。
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今後の研究の推進方策 |
平成29,30年度にはポリロタキサンとBMP2、siRNA、VEGF、メラトニン等を用いて、主に細胞生物学的手法により、これらが骨再生に有用であることを示してきた。しかし、in vivoでの骨再生に必要とされるポリロタキサンゲルの作製実験は行なっているが、実用には至っていない。平成31年度にはポリロタキサンゲルを作製し、それにこれまでの研究成果(BMP2、siRNA、VEGF、メラトニン等)を融合させ in vivoでの骨再生実験を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度~令和元年度の3年計画において当初の計画では平成30年度より動物実験を行う予定であったが、ポリロタキサンゲル作製が遅れており動物実験に至らなかった。次年度使用額は引き続きのポリロタキサンゲル作製および動物実験に使用する予定である。
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