研究課題
東南アジア地域の粘膜疾患の多くはベテル噛みに起因することが明らかになっているが,スリランカにおけるベテル噛みの口腔フローラ(OF)の変化については明らかにされていない.今年度は,スリランカのベテル噛み習慣者(BQC)およびその習慣のない者(NC)を対象に次世代シーケンサー(NGS)を用いてOFの比較を行った.実験に際し北海道医療大学ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理審査委員会の承認を得た.スリランカの紅茶園に勤務し, BQC19名およびNC23名に本研究内容に関して現地歯科医師による説明後,書面による同意を得た.口腔粘膜からスワブで採取しDNAを抽出した.DNAを16s rRNAのV3-4領域をPCRで増幅し,そのアンプリコンをもとにNGS MiSeqを用いデータを取得した.得られたデータを基にQIIMEを用いサンプル内菌種多様性,サンプル間の相関関係(主座標解析PCoA)および階層毎の菌種組成(Taxonomyプロット)を解析した.さらに菌種組成のデータからLEfSeによるバイオマーカーの探索を行った.多様性の指標であるShannon indexにおいてBQCおよびNCに統計学的な有意差が認められた.PCoA解析では,BQCおよびNCに異なったクラスターを形成していた.属レベルでの細菌種構成は,BQCで歯周病原細菌であるVeillonella,Prevotellaの割合が増加する一方で,Streptococcus属の割合が減少していた.BQCのバイオマーカーも同様にVeillonella,PrevotellaのLDAスコアの値が上昇していた.BQCを対象に適切な口腔保健管理を行うことができれば,OFにおけるDysbiosis(共生バランスの失調)発現を阻止できる可能が高い.ベテル噛みは,OFを大きく変化させ,特に歯周病原細菌の割合が上昇することが示唆された.
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Clin Epigenetics.
巻: 12(1)12 ページ: 1-10
10.1186/s13148-019-0806-y.