研究課題/領域番号 |
17K11922
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
竹内 良平 神奈川歯科大学, 歯学部, 特任教授 (30236442)
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研究分担者 |
熊谷 研 横浜市立大学, 医学部, 講師 (10468176)
川股 亮太 神奈川歯科大学, 歯学部, 特任教授 (40329199)
高垣 裕子 神奈川歯科大学, 歯学部, 特任教授 (60050689)
日高 恒輝 神奈川歯科大学, 歯学部, 特任講師 (90760041)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | LIPUS / 低出力超音波 / 力学刺激 / 骨形成 / 骨髄 / 体液性 / M2マクロファージ |
研究実績の概要 |
本課題では,骨の再生に不可欠な細胞供給を促進するため,損傷部位にLIPUS(低出力超音波パルス)照射を行うことにより遠隔の骨髄からも細胞を損傷部にリクルートするメカニズムを研究している.前年度にはヘテロGFPラットと同腹仔の野生型ラットを結合した末梢循環共有モデル(parabiosis rat)を作製,背部皮下にβ-TCPディスクを埋植後LIPUS照射を行った.分担者熊谷らの方法に従い2匹を外科的に結合して末梢循環共有モデルを作製,1週間後に対照群を含む全ラットの背部皮下にβ-TCP多孔体ディスク型人工骨を移植し,当日から2週間片側ラットのディスクに毎日20分間のLIPUS照射を行った.その結果非照射側のβ-TCPディスクでは,照射側よりも少ないがコントロール群よりは多くのGFP陽性細胞と血管の浸潤がみられ,免疫染色や骨髄細胞のQPCRの結果も,同様であった.非照射側にみられるLIPUSの効果,すなわち照射された局所だけでなく全身性にも骨再生促進作用が示されるメカニズムとして,埋入された異物に対する炎症性の応答が先行する際にみられるIL-6, RANKL, TNF-αやVEGFの増加だけでなく,IL-4(M2誘導性)やGal-3(Mac-2;M2特異的)などが誘導されてきた.これにより,LIPUS照射により,炎症性のM1マクロファージから代替的に活性化された抗炎症性・免疫抑制性のM2マクロファージへと変換される変化の惹起されたことが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
M1マクロファージからM2マクロファージへの転換は,LIPUSの作用としての報告はspinal fusion(脊椎固定術)においてみられるものの限定的であり,照射局所の作用についてである(Zhang,Z-C et al., 2019).そもそも骨の外傷が別の骨の骨形成にも影響を及ぼすというEinhorn Tの報告は1990に遡るが,その際に遠隔の骨髄の免疫細胞に変化がみられるという事実は, 2017のTatting, L et al.の報告まで明らかにされなかった.我々は,さらに,遠隔のサイトの骨形成に対してLIPUSという代替力学刺激も全身性の効果を示し,免疫系の細胞の中でもマクロファージの分極化を招くことを示すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
論文作成を行った後、COX-2やIL-6などの二面性(炎症による惹起と引き続くosteogenicな作用;これらを欠損するマウスは骨折が治癒しない)をもたらす情報伝達経路に迫りたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
データ解析の遅れに伴い論文投稿が出来なかったため.
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