研究課題/領域番号 |
17K11929
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 紀代 東北大学, 大学病院, 医員 (70746958)
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研究分担者 |
福永 智広 東北大学, 大学病院, 講師 (70362994)
清流 正弘 東北大学, 歯学研究科, 助教 (80510023)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯学 / 歯の移動 / 振動刺激 / TGFβ |
研究実績の概要 |
近年、ラットを用いて矯正力に振動力を負荷した研究により、歯槽骨内部において破骨細胞による骨吸収が亢進されることで歯の移動が促進することが示され、振動刺激の歯の移動促進に対する有効性が報告された。しかし、振動刺激による歯の移動促進効果の詳細なメカニズムについては未だ不明である。本研究では振動刺激の矯正治療への応用に向け、振動刺激が歯の移動に伴う骨リモデリングに及ぼす影響を分子レベルで解明することを目的に、機械的刺激に応答し、骨リモデリングを担う細胞の協調、相互作用に関わり骨リモデリングを制御するtransforming growth factor-β: TGFβに着目し、矯正的歯の移動実験ならびに培養細胞を用いたin vivo、in vitroでの分子生物学的解析を行う。本年度は破骨細胞前駆細胞様細胞株RAW264.7 cellと骨細胞様細胞株MLO-Y4 cellに振動刺激を負荷し、破骨細胞形成に対する振動刺激の影響をin vitroにおいて検討した。さらに、ラット実験的歯の移動モデルに振動刺激を負荷し、TGFβシグナル経路の転写因子であるnuclear factor-kappa B (NF-κB)の活性およびRANKLの発現をin vivoでも検討した。その結果、in vitro実験では、振動刺激の負荷によって、RAW264.7 cellの細胞増殖が有意に促進した。MLO-Y4 cellでは、対照群と比較して振動刺激負荷群でp-IκBのタンパク発現量およびRANKL mRNAの発現が有意に上昇した。in vivo実験では、対照群と比較して歯の移動および振動刺激負荷群で、骨細胞におけるNF-κBの核内移行およびRANKL発現が有意に増加した。以上のことから、振動刺激は骨細胞においてNF-κBを活性化させ、RANKL発現が亢進し、破骨細胞形成を促進していることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
破骨細胞前駆細胞様細胞株RAW264.7 cellと骨細胞様細胞株MLO-Y4 cellに振動刺激を負荷し、破骨細胞形成に対する振動刺激の影響をin vitroにおいて検討した。さらに、ラット実験的歯の移動モデルに振動刺激を負荷し、TGFβシグナル経路の転写因子であるnuclear factor-kappa B (NF-κB)の活性およびRANKLの発現をin vivoでも検討した。しかしながら、本年度に予定していたTGFβ, OPN, Runx2, CTGF, SMAD2/3, 増殖マーカーとして PCNA, Histone H4、アポトーシス関連因子であるCaspase-3, 8, 9およびBcl2, Baxの発現の検討は達成できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に破骨細胞前駆細胞様細胞株RAW264.7 cellと骨細胞様細胞株MLO-Y4 cellを用いて行った、破骨細胞形成に対する振動刺激の影響の検討結果をふまえ、さらにTGFβ, OPN, Runx2, CTGF, SMAD2/3, 増殖マーカーとして PCNA, Histone H4、アポトーシス関連因子であるCaspase-3, 8, 9およびBcl2, Baxの発現の変化について解析をすすめる。得られた結果をまとめ、成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度はin vitroでの実験を中心に計画をし、破骨細胞形成に対する振動刺激の影響をin vitroにおいて検討できたが、実験の進捗にやや遅れが生じ、本年度に予定していたTGFβ, OPN, Runx2, CTGF, SMAD2/3, 増殖マーカーとして PCNA, Histone H4、アポトーシス関連因子であるCaspase-3, 8, 9およびBcl2, Baxの発現について検討実験を行うことができなかった。
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