研究課題
矯正歯科治療において、歯の移動速度の亢進は治療期間の短縮につながるため非常に有用である。近年、ラットを用いた矯正力に振動刺激を負荷した研究により、歯槽骨内において破骨細胞による骨吸収が促進し、歯の移動が促進することが示され、歯の移動速度の亢進において振動刺激の有効性が報告された。しかし、振動刺激による歯の移動促進効果の詳細な分子メカニズムは未だ不明である。本研究では、機械的刺激に応答し、骨リモデリングを制御する分子の一つとして知られているtransforming growth factor-β:TGFβに着目し、振動刺激が歯の移動に伴う骨リモデリングに及ぼす影響を、分子レベルで解明することを目的としている。本年度は骨細胞様細胞株MLO-T4 cellに振動刺激を負荷し、経時的なTGFβタンパク質の発現量の変化ををウェスタンブロットにて解析した。さらにTGFβをノックダウンし、振動刺激の破骨細胞形成への影響を調べた。その結果、対照群と比較して振動刺激負荷群で、振動刺激負荷後15分および30分後のMLO-Y4 cellにおけるTGFβタンパク量が増加した。さらにTGF-β1をノックダウンしたMLO-Y4に振動を負荷してRAW264.7と共培養したところ、MLO-Y4への振動負荷により促されたRAW264.7の破骨細胞分化が抑制された。これらの結果は、振動による骨細胞のTGF-β1産生の亢進が、破骨細胞分化を促すことを示唆する。以上のことから、振動刺激による破骨細胞の増加は、骨細胞におけるTGF-β発現を介することが確認できた。
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Scientific Reports
巻: 11 ページ: 1-2
10.1038/s41598-021-82246-9
Journal of cellular Physiology
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