過去に行ったゲノムワイド関連解析では、欧米人よりも日本人で多く認められる骨格性下顎前突症の強いリスクを伴う感受性候補遺伝子を突き止めることができなかった。そこで家系を用いた全エクソーム解析により遺伝子機能に影響を与える原因変異を探索することを本研究の目的とした。 4世代にわたる15個体から成る家系(うち罹患者5個体)を用いた全エクソーム解析を昨年度までに行った。罹患者4名、非罹患者5名のゲノムDNAからSureSelect v6+UTRsキットを用いてエクソームライブラリを調整し、 次世代シークエンサーを用いてこのライブラリをシークエンスした。 その結果、罹患者4名の全てに認められ、非罹患者5名のいずれにも認められなかったエクソン領域のアミノ酸置換を伴う一塩基変異は、5個であった。この変異は、UBASH3B遺伝子、OR6M1遺伝子、OR8D4遺伝子、OR8B4遺伝子、BEST3遺伝子上に存在していた。 このうち、OR遺伝子の一塩基変異はこれらがコードするタンパクの機能に変化を及ぼさないことがほとんどであることから、これらの変異を除外した。また、 UBASH3B遺伝子の一塩基変異の頻度は欧米人よりも日本人で低いことより、この変異も除外した。BEST3遺伝子の一塩基変異はデータベースには掲載されていない 新規の変異であった。そこで、比較ゲノム解析を行ったところ、この塩基がコドンとなるアミノ酸は種を超えて保存されていた。よって、BEST3遺伝子のアミノ 酸置換を伴う新規の一塩基変異(c.1816C>A、p.L606I)は、骨格性下顎前突症の強いリスク因子であることが示唆された。 最終年度である今年度は、上記の研究実績を論文にまとめて投稿し、本実績は学術雑誌であるBone(インパクトファクター:4.36)に掲載された。
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