研究課題
本研究は、マウスを用いた歯胚移植実験を行い、移植後のドナー・レシピエント相互作用における歯根膜幹細胞の動態を検証し、その維持・分化機構の解明を目的とした。胎生期14.5日に母獣にドキシサイクリンを投与することにより(胎生期ラベリング法)、非対称分裂をする幹細胞/前駆細胞をラベルし(ラベル細胞)、深麻酔下で胎生15日齢~生後1日齢のラベルB6マウス下顎第一臼歯の歯胚を摘出後、歯根形成期の生後2週齢の非ラベルB6マウス上顎第一臼歯抜歯窩へと移植した。3日~16週間後にアルデヒド系固定液で灌流固定し、μCT解析、EDTA脱灰後、パラフィン切片を作製し、抗GFP、抗Gli1、抗ネスチン、抗ペリオスチン抗体を用いた免疫染色を行い光顕で観察した。さらに、全ての細胞がGFPを発現するGFPトランスジェニックマウスをドナーまたはホストとした歯胚移植後の治癒過程も合わせて検索した。歯胚移植の結果はネスチン免疫組織化学と歯根形成により4つのタイプに分けられた:象牙芽細胞未分化/歯根未形成(-/-)群、象牙芽細胞分化/歯根未形成(N/-)群、象牙芽細胞未分化/歯根形成(-/R)群、象牙芽細胞分化/歯根形成(N/R)群は、それぞれ34.1%、29.5%、12.5%、25.0%であり、胎生18日齢の歯胚を用いた際に良好な予後が得られた。歯胚の発育方向にはバリエーションがあり、術後2週に萌出を完了していない標本もあったが、歯冠および歯根形成が正常に進行した標本も見られた。quiescentな幹細胞と考えられるGFP強陽性細胞は歯髄中央部ならびに象牙芽細胞下層に維持されており、象牙芽細胞への分化も確認された。一方、歯周組織にはGFP強陽性細胞は認められなかった。以上より、通常の歯の発生過程で維持されるGFP強陽性歯根膜幹細胞は、歯胚移植では維持されない可能性が示唆された。
3: やや遅れている
COVID-19拡大に伴い、学会中止や学外研究者との資料確認・意見交換等が困難な事態となり、論文作成に遅れが生じているため
テレワークにより2020年度中に結果をまとめ、論文作成を予定している。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Sci Rep
巻: 9 ページ: 1490
10.1038/s41598-018-37291-2.
Regen Ther
巻: 11 ページ: 217-224
10.1016/j.reth.2019.08.001.
J Periodontol
巻: Sep 9 ページ: Epub
doi: 10.1002/JPER.19-0269.