研究課題/領域番号 |
17K11954
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
石田 陽子 新潟大学, 医歯学系, 特任助教 (10377187)
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研究分担者 |
前田 健康 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40183941)
大峡 淳 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40266169)
川崎 勝盛 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40529640)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 口蓋裂 / microRNA / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
口蓋裂発症は頻度の高い先天性疾患の一つである。これは口蓋形成が、わずかな遺伝子変異や環境変化にも反応する非常に敏感なプロセスである事を意味している。口蓋裂のほとんどは、非家族性かつ非症候群である。つまり、口蓋裂の多くは、ゲノム上の遺伝子変異が原因ではない。しかし、ゲノム以外のいかなる異常が口蓋裂をひきおこすのかは、依然として不明である。microRNAは、ゲノムと関係なく遺伝子発現を制御・伝達するエピジェネティクスなシステムの一つであるが、口蓋形成における機能は明らかにされていない。そこで、microRNAマウスを使用して、micreRNAの口蓋形成における役割を解明する。microRNAの機能はDicerの欠損により失活するため、Dicer欠損マウスを作成する。MicroRNAは、ほぼ全ての細胞に存在するため、Cre-LoxPシステムを利用してDicerの組織特異的欠損マウスを作成・検索することにより、どの部位のmicroRNAが口蓋形成に重要かを検索した。前年度口蓋裂の認められたDicerfl/fl;Wnt1Creマウスの解析を進めた結果、Dicerfl/fl;Wnt1Creマウスに口蓋突起は認められるものの、その大きさが著しく小さいこと、舌の側方に認められるものの舌背への挙上が生じていないことが明らかとなった。一方で、神経堤は顔面の多くを構成するため、Dicerfl/fl;Wnt1Creマウスの顔面の欠損の程度は激しく、口蓋裂の原因部位を特定することは難しい。そこで、口蓋突起のみからmiRNAを除去することで原因部位を特定するために、Dicerfl/fl;Osr2Creマウスを作成したところ、口蓋裂は認められず、Dicerfl/fl;Wnt1Creマウスに認められる口蓋裂が口蓋突起の外側でのmiRNAの欠損によるものであることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Dicerfl/fl;Wnt1Creマウスで口蓋裂が認められたにも関わらず、Dicer fl/fl;Osr2Creマウスで口蓋裂が認められなかったことは、Dicerfl/fl;Wnt1Creマウスでの口蓋裂の原因部位を特定するのに非常に大きな進展となった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、口蓋裂の認められたDicerfl/fl;Wnt1Creマウスにおける分子変動を、口蓋突起の外側に限定し、マイクロアレイ、in situ hybridization, 免疫染色、などで検索する。特に、器官発生に重要な役割を担うことが知られているShh, Fgf, Wnt, Tgfなどのシグナル経路の活性の検索には注意を払う。またMeox2, Shox2, Pax9, Msx1, Osr2などの口蓋形成関連遺伝子の発現も確認する。変動が認められた場合、アンタゴニストやアゴニストなどをDicer欠損マウスへ導入することによるレスキュー実験を行い、口蓋裂が形態的・分子的にレスキューされるかどうかについて検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要なマウス数の獲得に時間を要した関係で、使用できなかった消耗品が生じた。次年度は、前述した推進方策にしたがい、必要な実験動物、試薬等の消耗品類を購入する。また、国内外の学会における成果発表の旅費に充てる。
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