研究課題/領域番号 |
17K11958
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡橋 暢夫 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (40150180)
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研究分担者 |
中田 匡宣 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (90444497)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 口腔レンサ球菌 / マスト細胞 / アレルギー / 細胞死 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,まず,マスト細胞株 RBL-2H3 を用い,ミティス群口腔レンサ球菌を感染させた際に起こる細胞死のメカニズムの探求から研究を開始した. 細胞培養の系で,マスト細胞にミティス群口腔レンサ球菌を感染させると,数時間以内に細胞死が始まり,24時間経過後にはほぼ全ての細胞が死滅した.過酸化水素を分解するカタラーゼ処理によってこの細胞死が抑制されることから,菌の代謝産物である過酸化水素が細胞死を引き起こすことが判明した.過酸化水素を単独で添加した場合も,同様な細胞死が引き起こされた.細胞死のメカニズムを知るために,細胞核を蛍光染色して観察すると,一部の細胞ではアポトーシスに特異的な細胞核の縮小・分断化が見られた.しかしながら,アポトーシスに関与するカスパーゼの阻害剤を添加しても細胞死の抑制は見られなかった.ウエスタンブロット法によりカスパーゼの活性化を調べたところ,プロカスパーゼも含めたカスパーゼそのものが急速に分解されてしまうことを見出し,細胞死に伴って非特異的なプロテアーゼの活性化が起こることが示唆された. マスト細胞は IgE 抗原抗体複合体刺激により,ヒスタミンやプロテアーゼなどを放出する脱顆粒反応を引き起こす.そこで,ジニトロフェノール (DNP) を用いた脱顆粒反応の実験系を確立し,ミティス群レンサ球菌を感染させた場合の脱顆粒反応の変化を調べたところ,細胞死に伴って脱顆粒反応が抑制されるという知見を得ることが出来た.この詳細は次年度以降,さらに探求していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔レンサ球菌感染によるマスト細胞の細胞死には,菌の代謝産物である過酸化水素が関与していた.その細胞死では,非特異的なプロテアーゼの活性化が起こっていた.マスト細胞は IgE 抗原複合体刺激により脱顆粒を引き起こすが,口腔レンサ球菌がこの脱顆粒反応を抑制することが判明した.口腔常在細菌の代謝産物が,このような形でアレルギー応答に影響を与えるという新知見が得られたことから,本研究は順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,ミティス群口腔レンサ球菌によるマスト細胞の細胞死と IgE 抗原複合体による脱顆粒反応の抑制のメカニズムを解明することに注力する.細胞死にはマスト細胞自身のプロテアーゼが関与している可能性が高いが,それがどのようなプロテアーゼなのか,各種蛍光基質を用いて調べる.その後,マウスを用いた花粉症モデル実験系の確立に着手し,花粉症モデルにおいてアレルギー応答にミティス群口腔レンサ球菌がどのような影響を与えるかを調べる予定である.本年度,予備的に花粉症モデルの実験を行ったが,マウスの個体差によるバラつきが大きく,安定した結果を得るためには,花粉投与量,アジュバント,投与量,投与スケジュールなど様々な条件を検討する必要があると思われる.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に繰り越す金額は約1000円となったが,これは十分許容範囲内であると考えている.
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