研究課題
顎顔面の発生は短期間にダイナミックで神秘的な変化を見せながら進む。その過程で機械的な力が時間的・空間的に多様に作用していることは明らかであるが力学的観点からの理解は未だ進んでいない。口蓋形成は、左右の口蓋突起が下方に伸展、その後、水平方向へと屈曲し挙上、正中へと伸展し癒合を完了する。私たちは、最も頻度の高い形成異常の1つである口蓋裂の理解をする上で力学刺激を適刺激とする分子を標的とし、口蓋癒合のメカニズムの理解を深めることを目指し実験を行った。標的とする分子は、ヒト遺伝子変異と口蓋裂との関連が報告されているものを選択し、マウスの口蓋癒合前後の時間的、空間的変化を形態学的な手法を用いて観察した。まず、in situ hybridization法を用いて、胎生マウス口蓋組織におけるメカノセンサーのmRNAの発現および分布について解析した。口蓋の癒合前後を観察すると、口蓋突起の先端にて数種類のメカノセンサーが発現していること、さらに癒合の前後で発現の変動を認めた。次に特異的抗体を用いた免疫組織染色による解析を行った。特異的な反応を得る条件検討を進め、よりよい条件を確立することが出来た。そして、メカノセンサーの発現は、口蓋の癒合前後で突起の部位により特徴的な分布を示し、癒合が完了するとその発現が低下するユニークな様式を示した。さらに、超解像顕微鏡による観察により、メカノセンサー分子としてこれまで報告のある、細胞の伸展や移動に関わる分子であるアクトミオシン系との関連性も認められた。よって、力学刺激の強さに応じて活性化するイオンチャネルであるメカノセンサー分子は口蓋癒合に、時期特異的かつ部位特異的に関与することが示唆された。
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