エナメル質の再石灰化は歯科臨床上、重要な研究テーマであり、これまで様々な研究が行われてきた。CaとP が豊富な条件下でフッ化物は脱灰エナメル質を再石灰化するが、フッ化物と共にアメロジェニンタンパクを添加することでエナメルの結晶構造が緊密になることが報告されている。本年ではこれまでに作成した全長のリコンビナント・ヒトアメロジェニンに加え、アメロジェニンの分解様式を踏まえ、HAT-7細胞とMC3T3-E1に添加し、細胞増殖、ALP発現などの細胞分化、そして石灰化実験を行い、どの領域が歯原性上皮細胞の石灰化に関与するのかを解析する。 リコンビナントアメロジェニンは、pAMELXv3-Myc-DDK-HisTag遺伝子をタンパク質発現用哺乳類浮遊細胞 (EXPI細胞) に導入し、無血清培地 (EXPI Expression Medium) を用いて、37℃、5%CO2条件下で7日間培養した。その後、細胞浮遊液を遠心分離し (1000rpm,15min)、その上清を実験に用いた。 最終年度はリコンビナント・ヒトアメロジェニンとエムドゲインを対象とし使用した。エムドゲインはブタ歯胚より抽出したエナメルマトリックス抽出物で、その90%以上は疎水性のアメロジェニンからなると報告されている。 最終結果として石灰化誘導培地において低アメロジェニンは、細胞の石灰化に影響を及ぼさないものの、高濃度アメロジェニンを添加することでは、HAT7およびMc3T3-E1細胞においてせ石灰化が有意に減少することが明らかになった。
|