研究課題/領域番号 |
17K11970
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
丸谷 由里子 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (60400389)
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研究分担者 |
石崎 明 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (20356439)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯の再生 / GDF-5 |
研究実績の概要 |
現在、歯の再生を目指し、歯髄組織再生を試みた報告が多数なされている。組織の発生・再生には、細胞に酸素と栄養を供給するという観点から、血管新生が重要である。そこで歯髄組織再生には、組織内での血管系構築と、象牙質等の硬組織形成の作用を有する分子が重要だと考えられる。 代表的なBMPsの1つであるgrowth/differentiation factor-5 (GDF-5)は、軟骨・骨形成を促進し、また血管新生に重要な役割を果たす血管内皮増殖因子(VEGF)の遺伝子発現を上昇させることが報告されており、骨形成のみならず、血管新生にも関与すると考えられている。GDF-5は口腔領域にも発現が認められ、マウス歯髄由来幹細胞に添加培養すると、象牙芽細胞マーカー遺伝子の発現を上昇させることから、GDF-5が歯髄細胞を成熟象牙芽細胞に分化促進させる可能性が示されている。その際、歯髄中の幹細胞の歯髄内微小環境としての血管内皮細胞あるいはペリサイトが、歯髄幹細胞の増殖・分化能力を増大させる幹細胞ニッチとして働く可能性は大きく、GDF-5が有する歯髄幹細胞の象牙芽細胞分化促進効果をさらに高めるものと考えられる。 そこで、歯髄幹細胞に外来性にGDF-5を添加し、細胞増殖能、さらに象牙芽細胞および血管内皮細胞分化マーカー遺伝子発現について検討した。 歯髄幹細胞にGDF-5を添加培養した群と、非添加群との細胞増殖について比較したところ、両群において細胞数に違いは認められなかった。よってGDF-5は歯髄幹細胞の細胞増殖に影響を与えないことが示された。また、歯髄幹細胞にGDF-5を添加し、培養した群においてSmad6および7の遺伝子発現を検討した。GDF-5非添加群に比較し、Smad7の遺伝子発現に有意な低下が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題において、GDF-5による歯髄幹細胞株の分化誘導能を検討する目的で、歯髄幹細胞株(SP細胞)に、外来性にGDF-5を添加し、象牙芽細胞分化に関してはDSPP遺伝子、血管内皮細胞に関してはCD31等の遺伝子発現解析をRT-PCR法を用いて解析し、また、SP細胞の血管誘導能に関しては、VEGFやPDGFの発現について検討を行う計画であった。しかし、GDF-5添加による種々の遺伝子発現解析において安定した結果が得られず、研究計画が当初の予定通りに進行していない。
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今後の研究の推進方策 |
1)GDF-5による歯髄幹細胞株の分化誘導の検討 安定した結果が得られない原因として、現在使用している細胞の、GDF-5に対する反応の弱さが考えられる。そこで、GDF-5のレセプターを過剰発現させた歯髄細胞を作製し、以下の実験を行っていく方策である。歯髄幹細胞株(SP細胞)に、外来性にGDF-5を添加し、象牙芽細胞分化に関しては、DSPP遺伝子、血管内皮細胞に関してはCD31等の遺伝子発現解析をRT-PCR法を用いて解析する。SP細胞の血管誘導能に関しては、VEGFやPDGFの発現について検討を行う。象牙芽細胞の分化に関しては、Von Kossa染色による石灰化能についても検討する。 また、安定した結果が得られない原因として、現在使用している細胞におけるSmad7の発現が高いことも考えられる。Smad7の分解を促進する可能性があるArkadiaの遺伝子導入を行うことも検討している。さらに、現在使用している細胞に対してsingle cell-derived cultureを行い、GDF-5に反応する細胞を株化する。これらを使用することにより、歯髄幹細胞に対するGDF-5の影響を効率よくピンポイントに解析することが可能となると考える。 2)GDF-5による人工歯髄幹細胞の分化誘導の検討 本研究室では、新規の薬剤コンパウンドにより、分化した歯髄細胞から、歯髄幹細胞を人為的に誘導することに成功した。この手法により人工歯髄幹細胞にGDF-5を添加し、上記の1)と同様の分化誘導の検討を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、当初計画していた研究計画の実施、学会発表を次年度に延期することによって生じたものであり、延期した研究計画の実施、学会発表に必要な経費として平成30年度請求額と合わせて使用する予定である。
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