研究実績の概要 |
リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis: LAM)は肺、肺血管、リンパ管、および胸膜に及ぶ平滑筋細胞の緩徐な増殖を認めるまれな疾患で、若年女性に多い。症状は、呼吸困難、咳嗽、胸痛、および喀血であり、自然気胸がよくみられる。LAMは肺実質、脈管系、リンパ管、および胸膜など胸部全体における異型平滑筋細胞の増殖を特徴とし、肺構造の変形、嚢胞性気腫、および肺機能の進行性の悪化を引き起こす。この疾患は緩徐に進行し、しばしば何年間もかけて患者に呼吸不全や死をもたらす。喘息の際の気管支平滑筋細胞への血小板の影響を探る手がかりとして、LAM細胞における異常な平滑筋様細胞の増殖のメカニズムについて検討した。 LAM細胞に血小板由来成長因子(Platelet Derived Growth Factors: PDGF)を用いた細胞増殖試験(Cell Proliferation ELISA, BrdU)を行った際にPDGFおよびLysophosphatidic acid(LPA)で細胞増加を認めたが、Neurokinin-1(NK1) 受容体作動薬のSM-SubPを併用しても以前報告したような細胞の増殖抑制は認められなかった。そこで、LAM細胞にNK1受容体が存在するのかどうか、SM-SubPを用いて細胞内カルシウムアッセイを実施したところ、産生増強を認められたためNK1受容体は存在するが、それを上回る細胞増殖のメカニズムが示唆された。 LAM細胞の異常な細胞増殖のメカニズムを明らかにするため、腫瘍抑制因子として同定され、細胞増殖抑制に深く関与するPTENのフォスファターゼ活性を測定したところ、ヒト気管支平滑筋初代細胞ならびにヒト気管支平滑筋細胞株に比べ、LAM細胞は低いPTENフォスファターゼ活性を認め、PTENを介する細胞増殖抑制の制御異常の可能性を示す結果を得た。
|