研究課題
咀嚼筋の発育不全は咬合異常や顎運動機能の低下を招くことが知られている。咬合異常や顎運動の機能低下は、認知機能の低下や生後発達期のさまざまな器官の形成に影響を及ぼす可能性がある。本研究で用いるモデルマウスである mi/mi マウスは、ベーシック・ヘリックス・ループ・ヘリックス(bHLH) 構造を持つ MITF(Microphthalmia-associated transcription factor; 小眼球症関連転写調節因子)に突然変異 があり、小眼球症、難聴、アルビノのほか、無歯顎で咬合活動が低下していることが明らかになっている。近年、MITF は、さまざまな細胞や組織に存在し、細胞の増殖、分化、生存、エネルギー代謝などにおいて重要な役割を果たしていることが明らかになってきている。骨格筋でも 発現していることが報告されているが、その生理的役割についての詳細な報告はない。今回、我々が行った実験において、β-ARの慢性刺激により誘発される骨格筋肥大に対するMITFの役割を明らかに するために、クレンブテロール[β2-AR(骨格筋 の主要なサブタイプ)アゴニスト]投与による骨格筋肥大に対するMITF変異の影響を解析した。野生型マウスの咬筋、前脛骨筋では、筋線維横断面積が有意に増加し、肥大がみとめられたが、mi/miマウスでは、肥大がみとめられなかった。また、 mi/miマウスでは野生型マウスと比較して、咬筋、心筋では有意に線維化の上昇がみられた。
4: 遅れている
年度の初めでは、実験は順調に進行していたが、途中、研究代表者の妊娠中の体調不良や年度の後半には産休を取得していたことにより、当初の計画より遅れている。
初年度の後半で予定していた実験計画を実施する。今後は、組織用標本のための凍結切片を作製し、TUNEL 染色を行い、アポトーシスの頻度について解析する。また、SDS-PAGE 法を用いてミオシン重鎖(MHC)の組成解析を行うほか、MITF のターゲットと考えられる因子や骨格筋の成長や萎縮に関連する因子(mTOR、 Akt、HDAC、FOXO、MEF2、Myogenin、MyoD family)の発現量を Real-time PCR 、Western Blotting、ELISA、免疫組織化学を用いて解析する。
研究代表者の産休、また妊娠中の体調不良により年度の途中から実験が進行しておらず、当初の実験計画で年度の後半に購入予定であった物品を購入していないため、次年度使用額が生じた。使用計画としては、ミオシン重鎖(MHC)の組成解析を行うためのSDS-PAGE 法、MITF のターゲット因子、骨格筋の成長や萎縮に関連する因子の発現量を定量するためのReal-time PCR 、Western Blotting、ELISA、免疫組織化学関連の薬品やプラスチック消耗品を購入予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
Pflugers Arch.
巻: 470 ページ: 937-947
10.1007/s00424-018-2124-1