本研究の目的は、歯周炎と関節リウマチ(RA)の新たな関連機序を解明するため、RA患者群ならびに年齢・性別・喫煙・歯周状態が同程度の対照者群を対象に、Porphyromonas gingivalis感染レベル、血清中のシトルリン化変換酵素(PAD)、カルバミル化ペプチド(CarP)、好中球細胞外トラップ(NETs)の発現、P. gingivalis PADおよびシトルリン化ペプチドに対する血清抗体価についてプロファイリングを行うことである。 本年度は最終段階として、これまでにインフォームド・コンセントが得られたRA患者88名を対象に、新たな歯周病指標である歯周炎症表面積(periodontal inflamed surface area: PISA)を評価し、リウマチ検査および血清検査の結果との関連性について統計学的に検討を行った。 その結果、全RA患者88名のPISA値の中央値を基準にしてPISA高値群44名とPISA低値群44名に分類したところ、年齢・性別・喫煙・RA罹患期間に有意な群間差は認められなかったものの、PISA高値群ではPISA低値群と比較して、RA疾患活動性指標(DAS28)、C反応性蛋白(CRP)およびNETsの血清濃度がいずれも有意に高い値を示した。また、単変量解析Spearman’s rank correlation coefficientおよび多重回帰分析の結果、PISA値、NETs血清濃度、およびDAS28は、互いに正の相関関係にあることが認められた。以上の結果から、RA患者において、歯周炎の重症度はNETs血清濃度およびRA疾患活動性と関連することが示唆された。
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