研究課題
【研究目的】間葉系幹細胞(MSC)による疾病治療効果には、エクソソームと呼ばれる分泌小胞が中心的役割を果たしていることが近年明らかになっている。申請者はMSCの中でも、エクソソームの分泌量が多く採取が容易な特性を持つ、ヒト歯肉幹細胞(hGMSCs)を用いて研究を進めている。本研究では、hGMSCs由来エクソソームの持つ免疫制御および抗炎症作用に着目し、最小限の幹細胞から効果的に歯周病の炎症を収束させ組織リモデリング・再生シグナルを誘導するための新規歯周病治療の開発を目的とする。【研究結果】ヒト歯肉幹細胞由来エクソソームによる歯周病治療への応用の検証のため、組織修復性(M2)マクロファアージの誘導能と歯根膜細胞におけるLPS刺激時のRANKL発現に及ぼす影響について確認を行った。hGMSCs由来エクソソームによるM2マクロファアージの誘導が認められた一方、hGMSCsをTNF-α刺激することで、その効果が促進されることもわかった。同時に、CD73の発現亢進が認められたことから、エクソソーム由来の免疫制御分子であるCD73が、M2マクロファアージの誘導を担っていることが明らかとなった。歯根膜細胞においてもhGMSCs由来エクソソームのLPS誘導性RANKKL抑制効果が認められ、さらにTNF-α刺激後のエクソソームではさらに抑制効果が増強した。エクソソームの活性中心を担うとされるmiRNAの変動についてマイクロアレイ解析を行った結果、miR-1260bがwnt5aの抑制を介してRANKLの発現を抑制することも明らかとなった。さらに歯周炎治療への応用の検証を行うため、絹糸結紮歯周炎モデルマウスの実験系を確立した。現在、マウス歯肉へのエクソソーム注入による歯槽骨吸収抑制効果について組織学的解析を進めている。
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Scientific Reports
巻: 9 ページ: 3825
10.1038/s41598-019-40046-2.
http://www.dent.kyushu-u.ac.jp/perio/index.html
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/324