超高齢社会の日本においては脳梗塞の予防は喫緊の課題であり、そのリスク因子である動脈硬化と高血圧を抑制することは重要である。高血圧も歯周炎と関係 することが報告されているが、現在まで歯周炎が高血圧を悪化させるメカニズ ムは不明である。血圧はアンギオテンシンやアドレナリンがそれぞれの受容体 (receptor)に結合することで上昇する。重度高血圧症患者ではこれらの受容体にアゴニストとして結合する 自己抗体(Agonistic autoantibody: Aab)が高頻度に みられることが報告され、高血圧を引き起こす自己抗体として Angiotensin II type 1 receptor(AT1R)に結合する自己抗体 (AT1R-Aab)が注目されている。この自己抗体が受容体上のどの部位(アミノ酸配列)に 結合するかも 明らかとなっているが、なぜ 自己抗体が誘導されるのかは不明である。そこで本研究ではAT1R-Aab の結合部位と歯周病原細菌の間には 分子相動性があるのではないかとい う仮説の下にAT1R-Aab が結合するアミノ酸配列と歯周病原細菌のアミノ酸配列を検索した。その結果、 Angiotensin IIの受容体結合部位に結合する自己抗体(α1AR-Aab)の結合部位のペプチドとP.gingivalisのペプチドとの間に相同性を見出した。高血圧症患者を対象に血圧、服薬状況とP.gingivalis感染の関係を検討した。その結果、アンギオテンシン受容体拮抗薬薬、及びアンギオテンシン変換酵素阻害薬を服用している患者では、P.gingivalis感染によって拡張機血圧が有意に上昇している傾向が認められられた。
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