研究課題/領域番号 |
17K11993
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
坂井 信裕 昭和大学, 歯学部, 講師 (90286849)
|
研究分担者 |
高見 正道 昭和大学, 歯学部, 教授 (80307058)
古賀 貴子 昭和大学, 歯学部, 講師 (90451905)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 脂質代謝 / 骨代謝 / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
目的:慢性歯周病の局所治療薬は抗菌薬が中心であるが、歯槽骨に直接作用して骨再生を促進する歯周病治療薬の開発が期待されている。歯周病原因菌が心疾患や動脈硬化症に関連性があることや高脂血症薬シンバスタチンが骨形成を促進する報告もあるが、骨形成作用を目的した臨床応用には至っていない。近年、新規脂質異常症薬としてコレステロールアシル転移酵素(ACAT)のアイソザイム ACAT2 という新しい分子を標的とする代謝物質が創製された。本研究では抗動脈硬化作用のより高い新規ACAT2選択的阻害薬を中心に脂質代謝改善効果と、それに伴う骨代謝機構の変化を解明する。骨髄由来培養細胞実験の他、炎症性骨破壊モデルマウスを使用し、病態解析も行う。さらに従来の歯周病治療薬の他、骨形成促進作用のある薬剤(PTH,抗RANKL抗体)との併用効果も含め、炎症性骨破壊部位に対する局所薬物配送システム(LDDS)に基づいた歯槽骨再建を目的とする新たな歯周病治療の開発を目指すものである。 進捗状況:研究1年目は、ACAT2選択的阻害薬(PRD125)の脂質代謝の影響を検討するため、8週齢マウスに4週間、毎日経口投与(10mg/kg/day)し、血液を採取し生化学的検査を行った。その結果、PRD125投与マウスでは対照マウスに比べ、中性脂肪と総コレステロールは有意に減少したことから脂質代謝改善に有効であることが示唆された。一方、骨代謝への影響を検討するために、C57BL/6Jマウスから採取した細胞を用いて、破骨細胞分化誘導実験および骨芽細胞分化実験を行った結果、破骨細胞分化と骨芽細胞分化はともに抑制しなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況:研究1年目は、ACAT2選択的阻害薬(PRD125)の脂質代謝の影響を検討するため、8週齢C57BL/6Jマウスに4週間、毎日経口投与(10mg/kg/day)した。4週目に血液を採取し生化学的検査を行った。また、骨代謝への影響を検討するために、大腿骨を採取し、マイクロCTにて骨形態計測解析を行った。PRD125投与マウスでは対照マウスに比べ、中性脂肪と総コレステロールは有意に減少したことから脂質代謝改善に有効であることが示唆された。しかし大腿骨骨梁骨密度はPRD125投与マウスおよび対照マウスと比べても変化はなかった。一方、骨系細胞培養実験として、C57BL/6Jマウスから採取した細胞を用いて、破骨細胞分化誘導実験および骨芽細胞分化実験を行った。破骨細胞分化誘導実験は、下肢頸骨大腿骨から骨髄由来細胞を採取した。M-CSF, RANKL添加培地にPRD125存在下で7日間培養した後、TRAP染色を行った。その結果、PRD125存在下ではTRAP活性は変化しなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の方針:研究2年目以降は、骨代謝改善効果をさらに検討するため、骨粗鬆症モデルマウス(卵巣摘出OVX)を用いて、骨密度が低下した病態からのACAT2選択的阻害薬(PRD125)の効果を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は概ね計画通り研究は進んだが、次年度は破骨細胞、骨芽細胞の培養実験を行い、分化マーカーの遺伝子解析および免疫抗体染色等を実施するため、各種抗体の費用が多く掛かることが予想されるため、次年度へ繰り越すこととした。
|