研究課題/領域番号 |
17K11994
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小方 頼昌 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (90204065)
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研究分担者 |
中山 洋平 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (30434088)
高井 英樹 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (30453898)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アメロチン / 接合上皮 / 炎症 / 歯周病 / 歯肉上皮細胞 / FDC-SP / ODAM |
研究実績の概要 |
アメロチン(AMTN)は、近年新たに発見された分泌エナメルタンパク質の1つであり、そのタンパク質発現は成熟期エナメル芽細胞の基底膜および接合上皮の内側基底板に限局していることから、接合上皮と歯質との接着に関与する可能性が示唆されている。接合上皮は軟組織と硬組織の接合部に位置し、ヘミデスモゾーム結合により歯面に付着する特殊な上皮組織であり、歯周組織の健康を維持する役割を担っており、歯周炎の発症および治療において重要な領域であると考えられる。本研究では、歯周組織におけるAMTNの転写調節機構を解明するため、ヒト歯肉上皮細胞をTNF-αで刺激し、AMTNの転写への影響について解析を行った。 ヒト歯肉上皮様細胞株Ca9-22およびSa3と、ヒト唾液腺由来腺癌細胞株HSYを用いてリアルタイムPCRおよびウェスタンブロットを行い、AMTN mRNAおよびタンパク質量の変化を解析した。Ca9-22細胞を濃度の異なるTNF-αで12時間刺激すると、AMTN mRNA量は1 ng/mlから50 ng/mlの濃度で有意に増加し、10 ng/mlで最大となった。Ca9-22細胞およびSa3細胞を10 ng/ml TNF-αで刺激すると、AMTN mRNA量は6時間後に増加し、12および24時間後にさらに増加した。HSY細胞を10 ng/ml TNF-αで刺激すると、AMTN mRNA量は12時間後に増加し、24時間後に最大となった。Ca9-22細胞をTNF-α(10 ng/ml)で刺激すると、AMTNタンパク質量は6時間後に増加し、12および24時間後に最大となった。上皮細胞のマーカーであるCytokeratin19(CK19)のタンパク質量は、TNF-α刺激12時間後に増加し24時間後に最大となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長さの異なるヒトAMTN遺伝子プロモーター領域をPGL3basicルシフェラーゼ(LUC)プラスミドに挿入し、-950AMTN(-950~+60)、-769AMTN(-769~+60)、-501AMTN(-501~+60)、-353AMTN(-353~+60)、-211AMTN(-211~+60)および-100AMTN(-100~+60)コンストラクトを作製し、LUCアッセイを行った。-211AMTN、-353AMTNおよび-501AMTNをCa9-22細胞に導入し、TNF-α(10 ng/ml)で12時間刺激するとLUC活性が上昇し、-353AMTNで転写活性が最大となった。-353AMTNの転写因子結合配列に変異を挿入した-353AMTN mC/EBP1、-353AMTN mC/EBP2または-353AMTN mYY1をCa9-22細胞に導入し、TNF-α(10 ng/ml)で刺激すると、転写活性の上昇は-353AMTNに比べて部分的に抑制され、2種類のC/EBP結合配列に変異を挿入した-353AMTN mC/EBP1+mC/EBP2では、TNF-α(10 ng/ml)刺激による活性の上昇がさらに抑制された。-353AMTNを導入したCa9-22細胞にリン酸化阻害剤を作用させ、TNF-α(10 ng/ml)で12時間刺激すると、Aキナーゼ(KT5720; 100 nM)、チロシンキナーゼ(HA; 1 μM)、MEK1/2(U0126; 5 μM)、PI3キナーゼ(LY294002; 10 μM)、NF-κB(Triptolide; 100 nM)、p38(SB203580; 10 μM)、およびSrcチロシンキナーゼ阻害剤(PP1; 10 μM)により転写活性の上昇が抑制された。上記の結果が得られていることから、研究は順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ルシフェラーゼアッセイの結果から、-353から-100塩基対上流までのヒトAMTN遺伝子プロモーター配列中にTNF-αに応答する配列が存在すると考えられることから、同領域の転写因子結合配列のオリゴヌクレオチドを合成し、核内タンパク質との結合をゲルシフトアッセイで解析する。Ca9-22細胞をTNF-α(10 ng/ml)で刺激し、核内タンパク質を抽出し、C/EBP1、C/EBP2およびYY1配列への核内タンパク質の結合を解析する。また、結合の特異性をコンペティションゲルシフトで、結合する転写因子の同定を抗体を用いたスーパーシフトアッセイで解析する。さらに、転写因子結合配列と転写因子との結合をクロマチン免疫沈降法(ChIPアッセイ)で解析する。
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