研究課題/領域番号 |
17K11996
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
伊藤 弘 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30184683)
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研究分担者 |
小川 智久 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (20307961)
沼部 幸博 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (90198557)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯肉溝滲出液 / ヘモグロビン / 歯周組織検査 / 歯周病 / 発症前診断 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、前年度検討した歯肉溝滲出液 (gingival crevicular fluid; GCF) におけるヘモグロビン (Hb) 検査の有用性を、immuno-chromatography (IC) 法の応用により確立することである。我々は、GCFのHb検査は、日本歯周病学会ガイドラインに掲載され、世界的に認知されているポケットの深さ (PD) とポケット底部の組織抵抗性 (BOP) を補完できることを報告してきた。同時に、病状安定であると判断されるBOP(-)の場合にも、GCFにHbが確認され、発症前診断への徴候と推察し、歯周病の発症前診断の可能性を提唱してきた。 そこで、BOP(-)にも拘らず、組織損傷が生じていることを解明するために、supportive periodontal therapy (SPT) 期の患者に対し、GCFを採取し、生化学的マーカーとしてHbと組織損傷の状態を示すマーカーに対し、臨床パラメータと併せて検討を行った。なお、事前に、SPT期に入る前の歯周治療の介入程度を検索し、GCF検査に支障がないことを確認した。さらには、本研究で用いたカットオフ値による統計学的解析方法を確立し、本研究にて応用している (doi: 10.2329/perio.60.26)。 戦略として、Hbのカットオフ値を作成し、BOP(-)とBOP(+)に分類し、多重比較解析を駆使し、詳細な検討を行った。その結果、病状安定を呈するBOP(-)にも拘らず、Hbのカットオフ値を用いた分類から、カットオフ以上の場合、組織損傷を示す生化学的マーカーの上昇が認められ、歯周病が進行している可能性、所謂発症前の状態を示す結果となった。 現在、欧文誌への投稿を視野に入れ、同時に学会発表の準備段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までの懸案事項であった、GCFサンプル収集は目標達成に迫り、同時に研究実績の項目で述べたように、得られたGCFの生化学的検索に対する詳細な統計学的解析を行っている。同時に、欧文誌への投稿のため、文献検索や、投稿先の欧文誌に合わせた書式設定を行っており、やや投稿時期が遅れている現状がある。また、発症前診断としてのGCFのHb検査の意義を見出すために、BOP(-)における組織損傷の上昇を検討し、その上昇の確認がなされた。そして、この結果をもとにGCFのHb検査の有用性を立証するための戦略として、横断研究から、長期的観察を行うための候補被験者の選定を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
GCFのHb検査から得られた情報が歯周病の発症前診断として耐えうる情報となりうるか検討するために、将来的に歯周組織の病状悪化を示すことを実証するための戦略を基盤として、研究を推進する予定である。 具体的には、BOP(-)・Hb(-)群とBOP(-)・Hb(+)との比較をSPT期間において長期的に観察することとしたい。対象とするGCF生化学的マーカーは、組織損傷を呈するマーカーを候補として考えている。そして、長期的解析結果から得られたデータを基に、GCFのHbのカットオフ値を設定し、チェアサイドへの応用に向けて研究に邁進する予定である。将来的には、従来の歯周組織検査を補完するより精度の高い、次世代へ向けた歯周組織検査の実現に期待している。同時に、IC法の応用による Point of care testing の概念を基盤とし、検査時間の簡略・短縮、チェアサイドでの検査と被験者と検査者との検査結果の共有化といった利点を生かす、新規歯周組織検査の体系構築を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であった、-80度超低温フリーザーは、ペリオペーパー購入のため、予算的な購入は不可能となった。しかしながら、附属施設においてその代替品があり、管理責任者の保管サンプルに対するスペースが生じたため、その機器の使用を行うこととしている。また、得られたデータの統計解析と被験者の個人情報を補完するノート型PCを購入する予定である。
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