研究課題
歯周病原細菌の1つであるP.gingivalisが持つ線毛は、歯周組織破壊に重要な役割を担っていると考えられている。P.gingivalisは、FimAとMfa1の2種類の線毛を発現しているが、Mfa1線毛に関する研究は歴史が浅く、その生体組織への影響に関しては不明な点が多い。今回、歯周組織破壊におけるMfa1線毛の役割を明らかにすることを目的とし、in vitro研究として線毛の破骨細胞分化誘導能に関する検討を行った。また、in vivo研究として各種線毛発現を調節したP.gingivalisをマウスの口腔内に投与し、実験的歯周炎を惹起後、歯周組織の組織学的(H-E染色およびTRAP染色)および形態学的解析(マイクロCT撮像)等を行った。Mfa1線毛のみを発現しているP. gingivalis fimA欠損株(JI-1 株)、JI-1株を親株としてmfa5をテトラサイクリン耐性遺伝子に置換したmfa5欠損株(FMFA5株)、FMFA5株にインタクトなmfa5をプラスミドDNAに繋いで導入した相補株、およびFimA線毛のみを発現しているP. gingivalis mfa1欠損株をin vivo研究に、またこれら株より各種線毛を精製し、in vitro研究に使用した。P. gingivalisの口腔内投与により、実験的歯周炎の惹起とH-E染色による炎症性細胞浸潤を確認した。各種菌株による歯周組織破壊の程度の差異を現在、解析中である。また、RANKLで24h前処理したRAW264.7細胞に、各種精製線毛を加え、5日間培養した後、TRAP染色にて多核の破骨細胞数を測定したところ、JI-1とFMFA5C株由来精製線毛が他と比較して、破骨細胞形成能が有意に高かった。上記傾向は、リン酸カルシウムのコーティングプレート上に出来る吸収窩を測定する破骨細胞活性化能に関しても同様であった。
3: やや遅れている
各種菌株を用いた実験的歯周炎の惹起とその解析に関して、実験条件の設定が難しい部分があり、当初の予定より遅れている。
多種類の菌株を用いて、線毛発現の異なるP.gingivalisの歯周組織破壊に対する影響を詳細に解析することで、Mfa1線毛の役割、特に線毛構造の中で反応に重要な部位を同定することができると考える。
細胞培養実験と動物実験に関して、既に持ち合わせていた試薬を主に使用したため、次年度使用額が生じた。次年度は動物実験を中心に行う予定であることと細胞培養実験に関しても新たな試薬を必要とするため、次年度使用額を使用する。
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Journal of Diabetes Investigation
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