研究課題/領域番号 |
17K12000
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
菱川 敏光 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (10421249)
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研究分担者 |
鳥海 拓 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (40610308)
本田 雅規 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (70361623)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯周組織再生 / 細胞移植 |
研究実績の概要 |
本研究は、歯周組織の治癒後の安定に重要と考えられるエナメル質とセメント質表層の上皮性および結合組織性付着の再生が有利に誘導できる細胞の種類を明らかにすることである。初年度は、比較する細胞(歯肉・歯根膜・歯髄)の分離・培養方法の確立、移植に用いる細胞の足場の選択、動物実験モデルの確立が主な研究の目的である。具体的には、3種類の細胞の準備を計画し、歯肉の線維芽細胞は、SDラットの口蓋歯肉より酵素処理により分離・培養後、移植実験に必要な細胞数まで増殖させて液体窒素内に凍結保存した。同様にラットの歯根膜および歯髄からも線維芽細胞の分離・培養に着手し、培養条件の検討を行っている。細胞特性の解析として、コロニー形成能、遺伝子発現解析、タンパク発現解析などを計画し、コロニー形成能については、実験を終えている。次に、細胞の足場としてコラーゲンゲルとコラーゲンスポンジを比較検討した。まず、足場材料の移植実験を行い、材料の操作性からコラーゲンゲルが移植に適していることを確認した。次に、コラーゲンゲルに採取・培養した歯肉線維芽細胞を播種し、細胞の生存と外生の確認を行った。動物実験モデルの確立について、10週齢SDラットの上顎第一臼歯近心の歯槽骨を含めた歯周組織を削除した歯周組織欠損モデルと、歯槽骨を温存し歯肉を削除した歯肉欠損モデルを作成した。歯周組織欠損モデルでは、マイクロCTで歯槽骨削除量の再現性を確認し、組織学的解析にて軟組織の治癒を確認した。一方、歯肉欠損モデルにおいては、現在組織学的に解析中である。平成30年度は、確立した動物実験モデルを用い、凍結保存した2種類以上の細胞を移植することで、歯肉の再生および創傷治癒過程を観察し、術後初期の歯肉の機能回復の程度を検討する。特に歯面への上皮性付着および結合組織性付着の形成速度、その過程および関連する因子、形成される付着の性質を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度に計画したラット歯周組織由来幹細胞の採取および細胞移植治療モデルの確立について、細胞移植治療モデルは、10週齢SDラットの上顎第一臼歯近心より口蓋側根分岐部にかけて歯槽骨および露出歯根面のセメント質を除去後にマイクロCTにて確認し、歯槽骨の欠損形態の再現性を確認できた。また、採取した試料の組織切片より、歯根のセメント質が削除できていたこと、また、歯槽骨欠損後の治癒過程を経時的に確認し、術後14日において上皮および結合組織の歯面への結合を確認できた。以上より、歯周組織欠損モデルにおいては、当初の予定をほぼ達成できたと考えている。一方、歯肉切除モデルにおいては歯肉の削除量等の検討を行い、術式は習得できたが、実際の確認として、組織学的に観察する必要があり、今年度の早期に実施する予定である。また、今回用いる予定の細胞は、歯肉由来の線維芽細胞(間葉系幹細胞を含む)と歯根膜由来の線維芽細胞(間葉系幹細胞を含む)であるが、歯肉由来細胞は、昨年度中に移植に必要な細胞数を確保し凍結保存している。一方、歯根膜由来細胞についてはラット臼歯歯根膜からの採取法を習得したが、必要な細胞数の確保には至っていないため、現在、歯髄の線維芽細胞(間葉系幹細胞を含む)と共に培養条件を検討している。これらの細胞が間葉系幹細胞を含むかどうかの確認として、初年度は、歯肉由来細胞のコロニー形成能のみ評価し、間葉系幹細胞が含まれていると判断した。しかしながら、確認はコロニー形成能のみでは不十分であり、フローサイトメーターと遺伝子発現解析において確認予定であったが、それらの実験まで到達できなかった。in vitroの解析に必要な細胞数を得るために培養を行い、今年度の早期に実施予定である。以上より、主な計画を遂行できているものの、一部の実験に遅延が生じていることから、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、組織学的解析・マイクロCT解析による歯周組織再生、特に結合組織再生の評価および、マイクロアレイ・qPCRによる結合組織性付着に効果的な因子の検索を行う。歯周組織欠損モデルの治癒過程について組織学的解析を行い、歯肉およびセメント質の再生程度、結合組織性付着の状態としてコラーゲン線維の走向と上皮性付着を観察し、正常組織と比較する。また、マイクロCTにより歯槽骨形成の再生程度を評価する。 移植する細胞の種類によって歯周組織再生に有意な差があった時点の組織を採取し、これらの組織から抽出したRNAやタンパクの網羅的発現解析を行い比較することで、結合組織付着特異的な因子を検索する。また、発現に差が認められた遺伝子に関して、その発現量をqPCRを用いて定量的に分析して結合組織性付着及び上皮性付着に効果的な遺伝子を同定する。 上記計画を実行するために、初年度に予定したラット歯根膜由来細胞の培養を確立し、細胞が得られ次第、細胞移植実験を行う。移植用細胞に関して、ラット歯根膜細胞の培養が困難であると判断された場合には、ヒト由来歯肉、歯根膜または歯髄細胞への変更を検討し、その場合にはラットの系統も併せて変更を検討する。 移植実験では歯肉組織欠損モデルは一頭あたりの施術時間を減らすことができると考えられるため、実験群の頭数を増やすことで実験期間の短縮を計画している。また、歯周組織および歯肉欠損モデルにおいての細胞の足場としてより有効な材料の選定を予定しているので、in vitroでの培養実験を予備的に本年度の早期に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の計画中、順延した移植細胞の表面抗原解析、多分化能解析にかかる費用が未使用となっており、今後同実験に使用する予定である。
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